今回は変形性膝関節症やスポーツ疾患に用いられるPFC-FD™療法を実際に受ける際の流れについて、実際の施術風景をオーバル中目黒整形外科・高島先生にお伺いさせていただきました。
あらためてPFC-FD™療法の対象や特徴、そして実際の施術の流れを写真と動画にてご紹介いたします。
PFC-FD™療法とは
概要
PFC-FD™療法とは、患者さん自身の血液を検査・加工し、血液中の成長因子を濃縮して痛みのある部位へ注入し、比較的長い鎮痛効果やその他の症状低減を期待する治療法になります。
野球の大谷選手や田中将大選手などが肘に治療をおこなったPRP療法を応用した技術です。
実際にこの治療を受ける場合、どのような流れで施術が行われるのかを今回、オーバル中目黒整形外科様で取材させていただきました。
PFC-FD療法についてのより詳しい解説はこちらでも行っています。併せてご覧ください。
PFC-FD™療法を実施する目安
タイミングは「他の施術と迷うとき」
PFC-FD™療法は、膝をはじめとした関節の諸症状緩和を目的として行われます。なかでも“痛みの低減”を目的に投与されることが多く、オーバル中目黒整形外科・高島先生によれば「ステロイドを打つか迷うとき」に使用する事が多いとのことです。
ステロイドには非常に強力な鎮痛作用があります。ただし副作用も強く、頻繁に使用することができません。そこで「ステロイドは打ちたくないが痛みはなんとかしてあげたい」といった方を中心にPFC-FD™を投与されるとのことです。
また、変形性膝関節症をはじめ、関節のトラブルは手術が必要になることも少なくありませんが、様々な事情や心情で手術へと進めない方の代替案として提示されることもあるとのことです。
※PFC-FD™療法は手術の代わりになる施術ではありません。
対象となる方
以下のような方々を対象に実施されています。
- 関節が傷ついており、将来、変形性関節症に発展しかねない方
- 現在、ひざ等の関節に痛みや曲げ伸ばしにトラブルを抱えている方
引退して関節がボロボロのアスリートの方は将来的に変形性関節症へ発展するリスクが一般の方よりも高いため、そのリスクを低減するべく実施されています。
また、すでに変形性関節症を発症している方であれば、以下の方々へおすすめされていらっしゃるとのことです。
- 関節の引っかかり感や、ざらざらする感じ、など違和感のある方
- 骨棘(こつきょく)という骨のトゲによる疼痛が見られる方
加えて、疾患に進行がみられ、手術が推奨される方であっても、心理的、そして家庭のご都合等で手術の実施が難しいという方にも実施されています。
実際に、痛み止めなどの薬物療法やヒアルロン酸であまり効果がなかった変形性膝関節症306膝に対し、このPFC-FD™療法を実施して膝の状態を評価したテストでは、6割以上の方で12ヶ月後の点数が100点中13点改善していたことが確認された、という調査もあります。(*1)
※必ず効果があることを謳うものではありません。
特徴
自己組織を活用している治療の中では“比較的炎症反応が出にくい”ことが特徴とのことです。
また、凍結乾燥保存される性質により半年間ほどの保存が可能であることから、スポーツ選手の場合には事前に作成しておき、いざ怪我をしたというときに使用するという使用方法も可能です。変形性膝関節症の場合にも、一度の作製で数回に分けて注入することも可能になります。
治療の流れ
1. 診察
まずは、患部の状態を問診や触診を通じてPFC-FD™療法が適しているかどうかを医師が診断します。
その方に合っているかどうかや、ご本人の希望により、強い薬を使用して痛みを取るべきなのか、自己組織から作られる成長因子を関節に入れる状態を選ぶべきなのか、慎重に判断します。
膝の状況をより正確に確認するため、必要に応じて超音波検査などで膝内部の状態を確認します。
変形性膝関節症であまりに変形が激しい場合や、半月板損傷やその他スポーツ疾患においても手術でないと改善が期待できない場合など、これら診察を通じてPFC-FD™療法では効果が見込めないとして実施を見送る場合もあります。
2. 採血
PFC-FD™療法は、患者さん本人の血液から作製されます。よって、施術の前に血液を採取する必要があり、約50mLの血液を採取する必要があります。
採血を行ったあとはセルソース株式会社へ輸送され、その後、各種検査を行い、問題がなければPFC-FD™への加工、そして加工後に無菌検査を行い、3週間後を目安に採血をおこなったクリニックへ届きます。
3. 注入
溶解
フリーズドライされたPFC-FD™を生理食塩水で溶かし、粉末から液体へと戻します。
注入準備
そして液体となったPFC-FD™を患部へ注入します。関節への注入がメインとなりますが、炎症を起こしている関節腔内には関節液が貯留していることがあります。あきらかにPFC-FD™の注入の邪魔になる場合には関節液を穿刺(せんし)という針で抜く施術を行い、PFC-FD™がよく浸透するように工夫することがあります。
注入前には改めてエコーで膝・関節の内部の状況を確認します。炎症を起こしている場所は人によって変わります。それぞれに適した注入場所を探します。
注入
注入時は皮膚の周辺を殺菌して注入を実施します。もちろん注射特有の痛みは生じますが、基本的にそれ以外の副作用は殆ど確認されていません。
※閲覧時の注意※
実際にひざ関節へPFC-FD™を注射針で注入する映像が流れます。気分が悪くなる可能性のある方はご注意ください。
原則、施術は注入にて完了となります。あとはご自宅に戻り、日常生活を送っていただいて構いません。ただし、PFC-FD™療法はリハビリテーションとの相性が非常に良いと考えられており、「打って痛みがなくなったからよかった」で終了ではなく、その痛みが抑えられている間にリハビリテーションを行い、効果を最大限引き出すようにすると良いでしょう。
PFC-FD療法についてのより詳しい解説はこちらでも行っています。併せてご覧ください。
効果の見込める疾患・症状について
PFC-FD™療法は、とくにスポーツ障害に対して使用する場合は急性期に行うとよりその効果が実感できると考えています。お話を伺ったオーバル中目黒・高島先生によれば、効果の対象になる疾患や状態について、年齢を重ねたことによる変形性膝関節症に対して以外にも、軟骨の変性や毛羽立ち、半月板損傷に対しても実施されるとのこと。
軟骨や半月板などの軟骨組織には、普段、血流がほとんどないため血行に依存した自己修復は期待出来ず、PFC-FDの濃縮された成長因子によって、関節液等の液性成分の修復機序を強化することが期待できます。
また、スポーツ疾患、膝蓋腱炎・脂肪体炎・腱周囲軟部組織癒着などに対しては、別途“手術”を実施したのちに膝前面の痛みを訴える場合が少なくありません。PFC-FDではこれら手術後の疼痛緩和や、軟部組織の癒着の改善も見込めます。
変形性膝関節症については、とくに骨棘(こつきょく)と呼ばれる、変形性膝関節症によってできた骨のトゲが膝関節の外側にあって炎症を起こしている場合に痛みへの効果を主として期待できるとのことでした。
費用
採血から施術に至るまでの総額ですが、取材をさせていただきましたオーバル中目黒整形外科様では「220,000円(税込)」で行われています。
※血液採取後に感染症の陽性反応があった場合には施術を実施できません。その場合は検査代11,000円(税込)をお支払いいただきます。
副作用について
注射によって投与しますので、注射針による痛みがございます。また、自己組織から作製した成長因子群の液体ではありますが、関節に一定量の液体を注入する性質上、注入後に腫れている感じや圧迫感・違和感を覚える方がいらっしゃいます。
まれに注入後に痛みを覚える方がいらっしゃいますが、長くても1週間程度で収まっています。
患者さんご自身の血液を活用するという治療性質から、拒否反応などの重篤な副作用は現在のところ報告されていません。
PFC-FD™療法についての詳細は
さらに詳しい内容についてはコチラの特集ページでご説明しています。もし現在の治療に満足できず、手術を避けたい場合、ぜひご覧ください。
- 自分の疾患に有効なのか
- どんな効果があるのか
- 費用はどのくらいなのか
このようなお悩みをお持ちの方はぜひご覧ください。
PFC-FD™療法を受けられた患者さんインタビューが掲載されました。
重度(KL-4)の変形性膝関節症を患い、階段の上り下り、歩き始め、立ち上がりなどあらゆる日常生活動作で膝の痛みを抱えていた患者さま。
たくさんの医療機関をまわり治療を行ったそうですが、結果は思わしくなく「手術をするしかない」と言われ続けたそうです。
PFC-FD™療法の治療を選ばれた経緯や治療後の様子をご紹介しております。
治療に興味がある方はぜひご覧ください。
まとめ
関節に痛みをはじめとした症状でお悩みで、鎮痛剤やヒアルロン酸、電気などの保存療法ではどうしても症状が良くならないか、もしくは効いたとしても効果が極めて短期間で終わってしまうというご状況がお有りならば、炎症を起こしている部分に鎮痛と消炎の効果を期待してPFC-FD™療法を実施し、その間にリハビリテーションで根本的な症状改善を目指し、手術を回避できる可能性もあります。
ぜひ一度、ご自身が適用範囲かご確認・ご相談なさってみてください。
※脚注
*1…大鶴 任彦 et al. 変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築. -基礎と臨床 2020年9月号 特集:幹細胞・PRP・衝撃波−Biologic healingのエビデンス. 関節外科. 2020年9月. vol.39 No.9. 945-954