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変形性膝関節症

2021.9.29

変形性膝関節症の病態(症状)を医師が解説します。

取材先の医師とクリニック

久木留 伸典 先生

くきどめ整形外科

変形性膝関節症とは

変形性膝関節症とは、主に加齢を原因として膝関節の軟骨に徐々に摩耗が生じ、最終的には膝関節の変形を引き起こす疾患です。

痛みをはじめ、様々な症状を引き起こす変形性膝関節症。ここではその症状について詳しく解説していきます。

 

変形性膝関節症の症状(病態)

初期

(1) 動きはじめの違和感や痛み

変形性膝関節症における代表的な初期症状は、起床時に膝に違和感を覚える、椅子から立ち上がる際や歩きはじめなどの身体を動かし始めるときに感じる膝の動かしにくさや不快感・痛みです。

このほかに布団から出るときに痛みによってすぐに起き上がることができず、ゆっくり立ち上がりやすい姿勢を整えないと布団から出られないケースもあります。

ひと休みしたり、動いてしまえばこの症状は引いてしまう場合があるので見過ごされてしまうことも多いです。痛みではなく、違和感として自覚されることもあります。

 

(2) 階段を上り下りする際の痛み

変形性膝関節症に罹患すると階段の昇降が辛く感じられます。

特に降りるときの痛みが強く、ひどい場合には階段を後ろ向きになって下がるというケースも見受けられます。また、痛みのせいでスムーズな昇降が困難になり一段に両足をおいてから次の段に脚を伸ばす”二足一段”という状態になってしまう場合もあります。

階段の昇降動作は歩くよりも膝に負担がかかり、体重の4~7倍の負荷*がかかると言われています。そのため変形性膝関節症を示すシグナルとして、歩くことは問題がなくても階段で膝が痛むことが目安となることもあります。階段の昇り降りが辛くなってきたら注意しましょう。

 

変形性膝関節症は早めに気づくことができれば、症状が進行しないように様々な対策が可能な疾患です。ある程度の年齢を重ねて、当てはまる症状があれば変形性膝関節症を疑い、一度は整形外科を受診して診断をもらいましょう。

 

中期

(1) 膝を曲げ切ったり伸ばし切ることが困難に

変形性膝関節症は膝関節を変形させ、膝の曲げ伸ばしを困難にしていきます。

変形性膝関節症は膝軟骨がすり減って、その下にある骨も損傷させていきますが、損傷した骨が過剰に修復しようとして骨棘(こつきょく)という骨のトゲを形成してしまうことがあります。

 

変形性膝関節症が初期を過ぎて中期まで進行してくると、この骨棘が肥大化して膝を深く曲げることが難しくなって徐々に正座がしにくくなったり、膝を伸ばしきることが難しくなります。

 

(2) 歩行中の痛み

初期の頃は歩きはじめだけが痛く、歩いてしまえば痛くなかったものの、症状が進行するにつれて歩いている間も膝が痛い、という状況になってきます。また、重いものを持っての歩行でも痛みを覚えるようになり、買い物帰りの歩行がつらくなることがあります。

歩くこと自体が苦痛になってしまい、外出が億劫になり、運動を避けてしまうことも珍しくありません。そうなると膝を支える筋肉が衰え、さらに膝関節へかかる体重負荷が増加し、痛みが増加して更に外出を避ける、といった悪循環につながりかねません。

「ロコモ症候群」につながる可能性も

こういった症状の悪化が最終段階まで進むとロコモ症候群(運動器症候群)になりかねません。ロコモ症候群とは、膝などの運動器に生じている痛みや機能障害によって外出頻度が極端に下がったり、寝たきりになるなどして要介護状態に陥ってしまうことです。

 

早めに悪循環に陥らないように対処することが大切ですが、仮に外出が億劫になってしまうほど悪化したとしても、運動療法で筋肉、とくに大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)を鍛えて膝関節へかかる体重負荷を軽減することで痛みを改善するなどの対策はあります。いずれにしても整形外科専門医にかかるのが良いでしょう。

 

(3) 膝の腫れ

変形性膝関節症は膝関節に炎症を引き起こします。この炎症に対する反応として関節液が通常よりも多く分泌されます。これがいわゆる”膝に水が溜まる”という状況をもたらし、外見的には膝関節が腫れてきます。

自覚症状としては「膝が重い・重だるい」と言った膝の違和感が現れます。

 

末期

(1) 安静時の痛み

変形性膝関節症が末期まで進行すると、立っているだけ、さらには横になって安静にしているだけでも膝が痛んでくるようになります。痛みで夜中に目が覚めてしまうこともあります。

ここまで進行してしまった場合、できるだけ保存療法を試みて、それでも痛みが取れない場合には損傷した膝関節を人工関節に入れ替える手術が検討されます。

 

(2) 脚の変形が目立つ

変形性膝関節症の症状が末期まで進行すると、極端なO脚やX脚になることがあります。日本ではほとんどO脚になります。

もともと変形性膝関節症はO脚気味、もしくはX脚気味の場合に発症しやすい疾患です。脚が歪んでいることで膝軟骨の一部分に体重負荷が集中しやすく、軟骨の摩耗が引き起こされやすいからです。

O脚であれば膝の内側、X脚であれば膝の外側の軟骨が重点的にすり減っていきます。そうなるとその隙間はどんどん狭くなり、O脚やX脚を顕著にしてしまうのです。隙間がなくなるということは関節の余裕がなくなるということであり、膝関節を曲げたり伸ばしたりすることを一層困難にしてしまいます。

 

変形性膝関節症が末期まで進行すると歩くこと自体が困難となり、スーパーへの買い物すらできないような状態となりかねません。そうなると薬物療法でも痛みをごまかしきれず、運動療法で多少筋肉をつけたとしても歩くことが難しいという場合もあります。よって、多くは人工関節置換術によって変形した関節を人工関節に入れ替えて根本的な解決を目指すことも考えられます。

人工関節置換術はいまでは年間9万人ほどが受けるポピュラーな手術となっています。ですが、人工物を体に入れるということは簡単な決断ではありません。末期になる前に多血小板血漿(PRP)や、PRPを応用した技術であるPFC-FDなどのバイオセラピーも考慮してもよいでしょう。早めの治療で進行を予防することが大切です。

 

まとめ

解説してきましたとおり、変形性膝関節症は痛みによって運動を遠ざけ、さらに悪化してしまうといった悪循環に陥ることのある疾患です。まずはこの悪循環に陥らないようにすることが大事で、比較的早期に発見できれば筋力トレーニングやストレッチなどの運動療法によって改善が期待できます。

 

ただし、仮に症状が進行している場合でも、軟骨や骨を人工関節に入れ替える人工関節置換術に加え、最近ではご自身の体組織を活用するバイオセラピーという治療法も登場しており、実現したいライフスタイルに合わせて主治医と相談されるのが良いでしょう。

 

 

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※参考

…「変形性膝関節症の病態・診断・治療の最前線」順天堂醫事雑誌.2013,59 P.138〜151 石島 旨章 et al.

 

※脚注

…『よくわかる膝関節の動きとしくみ』伊能 良紀 秀和システム 2014

…『スポーツ医師が教えるヒザ寿命の延ばし方』小山 郁 アスキー 2007

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