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変形性膝関節症

2021.2.24/最終更新日:2022.5.13

変形性膝関節症の病態(症状)を医師が解説します。

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変形性膝関節症とは

変形性膝関節症とは、主に加齢を原因として膝関節の軟骨に徐々に摩耗が生じ、最終的には膝関節の変形を引き起こす疾患です。

膝の軟骨は、衝撃を和らげるクッションと、関節を滑らかに動かすための潤滑剤の役割を担っており、この軟骨が摩耗しその役割を充分に果たせなくなると、軟骨の下に位置する骨に負荷がかかり、徐々に骨も変形していきます。これが変形性膝関節症です。

変形性膝関節症の発症、つまり軟骨が摩耗したりその下の骨にも負荷がかかれば、痛みを始めとする様々な症状を引き起こします。ここでは変形性膝関節症の症状について、変形性膝関節症の進行具合に合わせて解説していきます。ただし、変形性膝関節症の進行度と症状は一致しないことが珍しくありません。MRI検査では軟骨の摩耗が確認されているにも関わらず痛くない、という方もいらっしゃいます。あくまで目安としてご理解いただけますと幸いです。

変形性膝関節症の症状(病態)

初期

(1) 動きはじめの違和感や痛み

変形性膝関節症における代表的な初期症状は、起床時に膝に違和感を覚える、椅子から立ち上がる際や歩きはじめなどの身体を動かし始めるときに感じる膝の動かしにくさや不快感・痛みです。特に膝関節の内側に症状が発生することが多いです。(*1)

解剖学的には、膝関節内の隙間自体は狭くなってはいないものの、軟骨の下に存在する骨が硬くなっていることが確認されたり、骨への過剰な負担に対する反応で異常増殖した骨のトゲ(骨棘:こつきょく)が見られたりします。(*2)

 

症状としてはこのほかにも、布団から出るときに痛みによってすぐに起き上がることができず、ゆっくり立ち上がりやすい姿勢を整えないと布団から出られないケースもあります。

一般に早期変形性膝関節症とされるこの時期の症状は、ひと休みしたり、動いてしまえば症状は収まる場合があるので見過ごされてしまうことも多いです。痛みではなく、違和感として自覚されることもあります。

(2) 階段を上り下りする際の痛み

変形性膝関節症に罹患すると階段の昇降が辛く感じられます

特に降りるときの痛みが強く、ひどい場合には階段を後ろ向きになって下りるというケースも見受けられます。また、痛みのせいでスムーズな昇降が困難になり一段に両足をおいてから次の段に脚を伸ばす”二足一段”という状態になってしまう場合もあります。

階段の昇降動作は歩くよりも膝に負担がかかり、体重の4~7倍の負荷*がかかると言われています。そのため変形性膝関節症を示すシグナルとして、歩くことは問題がなくても階段で膝が痛むことが目安となることもあります。階段の昇り降りが辛くなってきたら注意しましょう。

 

変形性膝関節症は早めに気づくことができれば、症状が進行しないように様々な対策が可能な疾患です。ある程度の年齢を重ねて、当てはまる症状があれば変形性膝関節症を疑い、一度は整形外科を受診して診断をもらいましょう。

中期

(1) 膝を曲げ切ったり伸ばし切ることが困難に

変形性膝関節症は膝関節を変形させ、膝の曲げ伸ばしを困難にしていきます。変形性膝関節症の進行が進むにつれ、膝を曲げられる角度が小さくなっていくことが確認された研究もあります。(*2)

変形性膝関節症は膝の軟骨がすり減っていき、軟骨の下にある骨も損傷させていきますが、損傷した骨が過剰に修復しようとして骨棘(こつきょく)という骨のトゲを形成してしまうことがあります。変形性膝関節症が初期を過ぎて中期まで進行してくると、この骨棘が肥大化して膝を深く曲げることが難しくなって徐々に正座がしにくくなったり、膝を伸ばしきることが難しくなります。

(2) 歩行中の痛み

初期の頃は歩きはじめだけが痛く、歩いてしまえば痛くなかったものの、症状が進行するにつれて歩いている間も膝が痛い、という状況になってきます。また、重いものを持っての歩行でも痛みを覚えるようになり、買い物帰りの歩行がつらくなることがあります。

歩くこと自体が苦痛になってしまい、外出が億劫になり、運動を避けてしまうことも珍しくありません。そうなると膝を支える筋肉が衰え、さらに膝関節へかかる体重負荷が増加し、痛みが増加して更に外出を避ける、といった悪循環につながりかねません。

「ロコモ症候群」につながる可能性も

こういった症状の悪化が最終段階まで進むとロコモ症候群(運動器症候群)になりかねません。ロコモ症候群とは、膝などの運動器に生じている痛みや機能障害によって外出頻度が極端に下がったり、寝たきりになるなどして要介護状態に陥ってしまうことです。

 

早めに悪循環に陥らないように対処することが大切ですが、仮に外出が億劫になってしまうほど悪化したとしても、運動療法で筋肉、とくに大腿四頭筋(太もも前面の筋肉)を鍛えて膝関節へかかる体重負荷を軽減することで痛みを改善するなどの対策はあります。いずれにしても整形外科専門医にかかるのが良いでしょう。

(3) 膝の腫れ

変形性膝関節症は膝関節に炎症を引き起こします。この炎症に対する反応として関節液が通常よりも多く分泌されます。これがいわゆる”膝に水が溜まる”という状況をもたらし、外見的には膝関節が腫れてきます

自覚症状としては「膝が重い・重だるい」と言った膝の違和感が現れます。

末期

(1) 安静時の痛み

変形性膝関節症が末期まで進行すると、立っているだけ、さらには横になって安静にしているだけでも膝が痛んでくるようになります。痛みで夜中に目が覚めてしまうこともあります。

ここまで進行してしまった場合、できるだけ保存療法を試みて、それでも痛みが取れない場合には損傷した膝関節を人工関節に入れ替える手術が検討されます。

(2) 脚の変形が目立つ

変形性膝関節症の症状が末期まで進行すると、極端なO脚やX脚になることがあります。日本ではほとんどO脚になります。

もともと変形性膝関節症はO脚気味、もしくはX脚気味の場合に発症しやすい疾患です。脚が歪んでいることで膝軟骨の一部分に体重負荷が集中しやすく、軟骨の摩耗が引き起こされやすいからです。

O脚であれば膝の内側、X脚であれば膝の外側の軟骨が重点的にすり減っていきます。そうなるとその隙間はどんどん狭くなり、O脚やX脚を顕著にしてしまうのです。隙間がなくなるということは関節の余裕がなくなるということであり、膝関節を曲げたり伸ばしたりすることを一層困難にしてしまいます。

変形性膝関節症の原因

変形性膝関節症は膝の軟骨が摩耗することが始まりとされます。膝の軟骨が摩耗する理由には個々人により差がありますが、代表的なものは、長年のダメージの蓄積、O脚などの先天的な要素を原因として軟骨に負荷が集中しやすい脚の構造、加齢に伴い筋力が落ちて体重負荷が軟骨に集中するなど、様々な要因が示唆されています。

変形性膝関節症の詳しい原因については「変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)の原因とは」を御覧ください。

変形性膝関節症の診断

変形性膝関節症に罹患しているかどうかは、整形外科医による診察と、レントゲンやMRIなどを用いた検査により診断されます。

診察においてはここまでご紹介してきた症状の有無や程度、レントゲン検査では膝関節における大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)との隙間がどの程度狭くなっているか、MRI 検査ではレントゲンでは映らない軟骨の状態の確認を行います。

変形性膝関節症は国際的な進行度の分類基準としてKellegren-Lawrence分類(KL分類)と呼ばれる指標があり、上記診断に基づいて4つに分類されます。詳細については「変形性膝関節症のステージ分類とその診断方法について医師が解説」にてご紹介しています。

 

変形性膝関節症の治療

ここまで解説してきたように、変形性膝関節症の症状は次第に悪化することが多く、最終的には歩く・座るなどの基本的な動作が困難になることもあります。「歳のせい」と看過せず、痛みや違和感を感じたら速やかに整形外科を受診し、診断を受け、悪化しないように治療を開始することが大切です。

変形性膝関節症の治療については「変形性膝関節症に対する治療の種類や特徴について医師が解説」で詳しく解説していますが、こちらでも簡単に解説いたします。

保存療法

変形性膝関節症の治療は、患者さんの進行度や症状の重篤さにも左右されますが、まずは「保存療法」から始めることが一般的です。保存療法の代表例としては痛み止めやヒアルロン酸注射などの”薬物療法”、筋力訓練や可動域訓練などのリハビリテーションを行う”運動療法”を行います。平易に述べるのであれば「手術をしない治療」のことです。

ただし、保存療法に含まれる運動療法は変形性膝関節症への対応の基礎となる治療であり、後述する手術を行った場合でもこの運動療法をしっかり行わないと十分な効果が得られないと言われています。

手術

変形性膝関節症の進行度が重篤と認められる場合、つまり軟骨がほとんど消失していたり、変形性膝関節症の症状がかなり進行して痛みのために夜間に起きてしまうなどのケースでは、手術を検討する場合もあります。

変形性膝関節症の手術の代表例として、すねの骨(場合によっても大腿骨も)を切って脚の角度を調節する”骨切り術”、摩耗した軟骨と骨の代わりに人工の関節を設置する”人工関節置換術”が挙げられます。

 

まとめ

解説してきましたとおり、変形性膝関節症は発症すればその痛みや症状によって外出などの運動から遠ざかり、より一層症状が悪化してしまう悪循環に陥りやすい疾患です。よって、発症初期に整形外科を受診し、適切な治療を受け、この悪循環に陥らないようにすることが大切と言えます。

ただし、仮に症状が進行している場合でも、手術によって症状からの解放が期待できます。また、最近では患者自身の体組織を活用する再生医療やバイオセラピーも登場しており、個人の実現したいライフスタイルに合わせて主治医と相談されると良いでしょう。

 

 

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※参考

…石島 旨章 et al.「変形性膝関節症の病態・診断・治療の最前線」順天堂醫事雑誌.2013,59 P.138〜151

…伊能 良紀「よくわかる膝関節の動きとしくみ」秀和システム 2014

…小山 郁「スポーツ医師が教えるヒザ寿命の延ばし方」アスキー 2007

 

※脚注

(*1)…立花 陽明「変形性膝関節症の診断と治療」理学療法科学20巻 (2005)3号

(*2)…種継 真輝, 寺山 佳佑, 田村 滋規, 崎田 正博「早期・初期変形性膝関節症における変形重症度分類に 影響を及ぼす因子の検討」ヘルスプロモーション理学療法研究9巻 (2019)2号

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