関節治療オンライン

メニュー

PFC-FD

2020.7.13/最終更新日:2023.10.12

PFC-FD™療法とは|自己血液を活用する再生医療由来技術

PFC-FD™療法とは

自らの血小板に含まれる“成長因子”を利用する治療

PFC-FD™療法とは、患者さんご自身の血小板に含まれる成長因子を活用する治療で、関節や筋腱の疾患・損傷に対する注射によるアプローチです。血小板が傷を治す際に放出する“成長因子”を抽出、人体がもともと持つ「抗炎症作用・自己治癒力」を高める治療法です。

ゴルフのタイガー・ウッズ選手や、野球では大谷翔平選手が怪我の改善に活用したことで話題になった再生医療「PRP(多血小板血漿)療法」がありますが、PFC-FD™療法はそのPRP療法を応用した技術になります。

現在ではPRP同様にさまざまな関節症や、関節周囲の靭帯や軟部組織の治療、そして現在では不妊治療領域でも活用が広まっています。

PRPとPFC-FD™の違い

PRPとは、自己血液を遠心分離して得られる血小板が多量に含まれた液体(多血小板血漿)のことです。PFC-FD™はこのPRPから成長因子を抽出・凍結乾燥したものです。血小板に含まれる成長因子には、PDGF、FGF、EGF、VEGF、TGF-βなどがあり(*1)、これらの成長因子を炎症を起こしている患部に注射することで、抗炎症作用や創傷治癒、組織修復が期待されます。

従来のPRPは採血から遠心分離によって血小板の濃い液体を作製、採血に訪れたその場で施術を行うことが一般的です。一方、PFC-FD™は血液を再生医療センター(セルソース株式会社)に輸送して加工・活性化・凍結乾燥を行うので、施術までに採血から約3週間かかってしまいます。しかし、凍結乾燥を行っているため約半年間の保存が可能で、計画的な治療設計に向いているという利点があります。(*5

また、一般的なPRPには免疫機能をもつ免疫成分(白血球やマクロファージ)を含みます。白血球をはじめとした免疫成分は外敵への攻撃機能があり、身体には不可欠な細胞ですが、一方で痛みとともに炎症を引き起こす可能性もあります。これに対し、PFC-FD™では加工の過程で無細胞処理を行っており、純粋に血小板から抽出した成長因子を注入することが可能で炎症反応は比較的少ないとされます。

 

患者さんご本人の治療への希望、望むライフスタイルに応じて、医師とのご相談のもと、どちらにするか決められるとよいでしょう。

PFC-FD™療法で改善が期待できる疾患

PFC-FD™の注入によって改善効果が期待できる疾患はおおまかに下記のようになっています。現在もっとも活用されている疾患はひざの「変形性膝関節症」です。

疾患 対象部位 疾患の例
変形性関節症
足首
変形性膝関節症
変形性股関節症
靭帯損傷
膝十字靭帯損傷
肘関節靭帯損傷
腱炎
足首
膝蓋腱炎
アキレス腱損傷

 

その他に、半月板損傷や靭帯損傷、腱炎などの他の運動器疾患でも効果が期待されています。(*3)

PFC-FD™療法の効果

「ひざ」をはじめとした関節疾患に対し、以下の効果が期待できます。

  • 痛みの緩和
  • 日常生活動作の改善(階段昇降、トイレ動作や寝返り など)
  • 曲げ伸ばしや腫れといった症状の軽減
  • 日常感じる違和感や、そのために失った身体的自信の回復

PFC-FD™を関節内に注入(注射)することで炎症を抑制、痛みや腫れの緩和をはじめとした様々な効果が期待できます。個人差がありますが持続力があり、概ね3ヶ月から半年(*2)、23年6月に発行された論文によれば変形性膝関節症患者312名(最終追跡可能者302名)に対しPFC-FDを施術後1年で約60%で効果が持続していました。(*5)

ここではPFC-FD™療法が最も使用される疾患である“変形性膝関節症”に対するPFC-FD™療法のくわしい効果を研究結果(*4)(*5)をもとにご紹介します。これらの研究ではそれぞれ、306膝(*4)と312名(*5)に対してPFC-FD™の投与を行い、世界的に採用されている評価基準を用いて実臨床における治療成績を測定しています。

(※それぞれの論文におけるKOOS(Knee Injury and Osteoarthritis Outcome Score)による測定結果を記載しています。)

疼痛軽減

膝痛に悩む人

PFC-FD™療法を変形性膝関節症に対して実施した際に期待される特徴的な効果は、疼痛の軽減です。痛みが軽減されたかどうかを、下記のような質問項目から100点満点で点数化します。

  • 膝をひねったり回したりするときの痛み
  • 膝を完全に曲げるとき・完全に伸ばすときの痛み
  • 階段を上り下りするときの痛み
  • 夜、寝ているときの痛み

変形性膝関節症の306膝に対する研究(*4)では、PFC-FD™療法実施の前後での痛みの変化を測定。平均49.4ポイントだった治療前の値が、術後1ヶ月後に23%、3ヶ月後には29%、半年後には32%の疼痛改善が見られています。

変形性膝関節症患者312名に対する研究(*5)では施術後に他の治療へ進んだ患者を除き最終は302名で評価、1年後に平均29%の改善が確認されています。

症状改善

PFC-FD™療法を変形性膝関節症に実施した場合に症状の改善も認められています。膝の”症状”の変化は、下記のような質問項目から点数化します。

  • 膝を完全に伸ばせるか・完全に曲げられるか
  • 膝に腫れがあるか
  • 動いている最中に膝が引っかかったり、動かなくなったりするか

変形性膝関節症の306膝に対する研究(*4)では、これらの膝の症状がPFC-FD™療法の実施から1ヶ月後には平均17%、3ヶ月後には19%、半年後には22%の改善が見られています。

変形性膝関節症患者312名(最終評価可能者は302名)に対する研究(*5)では1年後に平均19%の症状改善が見られました。

日常生活動作におけるストレス軽減

太ももの筋肉を鍛える運動の様子

変形性膝関節症の患者の方は、日常生活動作に支障をきたすことが少なくありません。日常生活動作における膝に関する質問は下記のようなものがあります。

  • 階段の上り下りが困難
  • 座った状態から立ち上がることが困難
  • 買い物に行くことが億劫
  • ベッドから起き上がるときに不自由や困難を感じる
  • 家事を行うときに不自由や困難を感じる

変形性膝関節症の306膝に対する研究(*4)では、この日常生活動作で感じるストレスの度合いがPFC-FD™療法を実施してどのように変化したかを明らかにしています。PFC−FD™療法実施から1ヶ月後には平均11%、3ヶ月後と半年後は同じで14%の改善が見られています。

変形性膝関節症患者312名(最終評価可能者は302名)に対する研究(*5)では1年後に平均13%の改善が見られました。

スポーツ活動におけるストレス軽減

変形性膝関節症に罹患すると、関節機能の低下に伴ってスポーツ活動に取り組むことが困難になるケースが少なくありません。趣味のスポーツに満足に取り組むことができずに悩むこともあるでしょう。

研究では、下記のスポーツ動作をする際にどの程度困難を感じるか、もしくはその動作を全くできないかどうかなどを評価します。

  • しゃがむ
  • 走る
  • ジャンプ
  • 膝をひねったり回したり
  • ひざまずく

変形性膝関節症の306膝に対する研究(*4)では、スポーツ活動に関する質問項目において、PFC-FD™療法実施から1ヶ月後には平均32%、3ヶ月後には40%、半年後には45%の改善が見られています。

変形性膝関節症患者312名(最終評価可能者は302名)に対する研究(*5)では1年後に平均46%の改善が見られました。

持続力

引用:Tadahiko Ohtsuru et al. Freeze-dried noncoagulating platelet-derived factor concentrate is a safe and effective treatment for early knee osteoarthritis _Fig 3 (*5)

膝関節機能に関する様々な項目において、PFC-FD™療法を実施してから12ヶ月後も改善していることが研究から明らかになっています(*4)(*5)。

PFC-FD™療法は疼痛軽減など、ここまで紹介してきた効果が期待できますが、単にそれらの効果があるというだけでなく、その長期的な持続も期待できる、ということです。

この持続力を活かし、症状が抑えられている間に運動療法をおこない患部周辺の筋肉を鍛えることで関節への負荷を減らすことができるため、QOL(生活の質)の改善へとつながります。また、痛みが軽減することで運動がしやすくなり体重低下に成功すれば、さらに膝関節にかかるストレスが軽減する、という好循環を獲得できる可能性もあります。

PFC-FD™療法のメリット

①安全性

PFC-FD™は患者様ご自身の血液から製造されるため、他人の組織を使った治療や薬物による治療と比べると、拒否反応や感染症リスク、その他の副作用が少ない治療と言えます。

もちろん注射特有の痛みはあります。また、稀に一週間程度の腫れが残ってしまう場合もありますが、速やかに日常生活に戻れることがほとんどです。

302名に対しPFC-FD™を施術した研究では、6%に腫れや痛みなどの副反応が生じ、1%で37度の発熱があったものの特段の治療措置をせずに48時間で治まった、と報告されています。(*5

②施術が簡便

PFC-FD™療法は原則2回医療機関に訪れていただき完了します。手術や、手術にともなう入院といった負担がなく、注射を受けた日に歩いて帰ることも可能です。

ただし、PFC-FD™療法はその抗炎症作用で痛みが引いている間に運動療法を取り入れることで効果を最大化できるため、施術後に運動療法の指導を受けるための通院が推奨されています。

PFC-FD™療法のデメリット

①自由診療のため治療費は自己負担

PFC-FD™療法は新しい治療であり、公的保険適用ができない「自由診療」という枠組みのなかで行われています。保険診療の場合、治療を受ける方の支払う費用は治療費の一部で済むのに対し、自由診療では全額自己負担となり、PFC-FD™を提供する医療機関や施術方法によりますが、20万円から30万円ほどとなります。

治療を提供している各医療機関へ直接お問い合わせいただくことが確実です。

②効果にばらつきがある

PFC-FD™療法は個人の血小板に含まれる成長因子の働きを活用した治療です。そのため、一般的な薬と違い効果にばらつきがあります。

個人の血小板やそれに含まれる成長因子の働きによって効果が変わるので、あまり働きが強くない方の場合には効果が薄かったり、逆に働きが強い方の場合は思ったよりも効果が出ると言ったことが想定される治療になります。

PFC-FD™療法を受ける流れ

PFC-FD™療法の流れをご説明いたします。加工の過程は厚生労働省の認可を受けた細胞加工センターでの製造工程を掲載しています。
このうち、患者様が医療機関へお越しいただく必要があるのは「①採血」と「⑥患部へ注入」のみになっています。実際に施術を受ける映像をコチラの記事でもご紹介していますので気になる方はご覧ください。

① 採血

PFC-FD™療法を提供している医療機関で採血を受けます。患者様から約50mlの血液を採取し、厚生労働省認可の細胞加工センターに送られます。

患者様に特別な準備は基本的に必要ありません。

② 抽出(PRPの作成)

細胞加工センターに届けられた血液を、遠心分離機にかけ、PRP(多血小板血漿)を作成します。

③ 活性化

塩化カルシウムを加えることによりPRP内の血小板が活性化され、成長因子が放出されます。

この工程により、血小板から成長因子が放出された液体「PFC」が完成します。

④ セルフリー加工

「セルフリー加工」とは「無細胞加工」と訳され、作製されたPFCに残った細胞を専用のフィルターを使用して濾過することにより除去します。
なるべく成長因子が直接患部に届くようにこの処理が行われます。

⑤ フリーズドライ

無細胞加工が施されたPFCを凍結乾燥します。凍結乾燥することにより長期保存(約6か月間)と輸送の簡便化が実現できます。

また、成長因子成分の含有量やその働きに対してこの凍結乾燥技術による影響はなく、生理食塩水で溶くことで元の状態へと戻すことができます。フリーズドライ後のPFCが「PFC-FD™」と呼ばれる状態です。これで「PFC-FD™」の完成です。

 

⑥ 患部へ注入

採血からおよそ3週間後、医療機関にて患者様が来院するタイミングに合わせて凍結乾燥された「PFC-FD™」を生理食塩水で液体に戻します。液体に戻した「PFC-FD™」を患者様の患部へ注射することでPFC-FD™療法は完了となります。



 

PFC-FD™療法についての詳細は

さらに詳しい内容についてはコチラの特集ページでご説明しています。もし現在の治療に満足できず、手術を避けたい場合、ぜひご覧ください。

下記についてお悩みの方はぜひご覧下さい。

  • 自分の疾患に有効なのか
  • どんな効果があるのか
  • 費用はどのくらいなのか
  • 近くで受けられるクリニックはどこか

実際に施術を受ける映像をコチラの記事でもご紹介していますので、合わせて施術時の実際の場面が気になる方は御覧ください。

PFC-FD™療法を受けられた患者さんインタビューが掲載されました。

重度(KL-4)の変形性膝関節症を患い、階段の上り下り、歩き始め、立ち上がりなどあらゆる日常生活動作で膝の痛みを抱えていた患者さま。

たくさんの医療機関をまわり治療を行ったそうですが、結果は思わしくなく「手術をするしかない」と言われ続けたそうです。

PFC-FD™療法の治療を選ばれた経緯や治療後の様子をご紹介しております。

治療に興味がある方はぜひご覧ください。

 

ひざ関節の悩みに手術のいらない新治療を。

 

 

※脚注

*1…Functional Food Research 16 (2020) 「変形性膝関節症に対する新しい治療“PRP療法”について」齋田良知

*2…Regenerative Therapy11 (2019)5-7 「Can intra-articular injection of freeze-dried platelet-derived factor concentrate regenerate articular cartilage in the knee joint?」 Tomohiko Shirata,Yuki Kato

*3…別冊整形外科 1巻76号 (2019年10月)運動器疾患に対する保存的治療――私はこうしている Ⅴ.下肢疾患に対する保存的治療 「内側半月板の脱出を伴った変形性膝関節症患者への多血小板血漿注射の効果」戸田佳孝

*4…大鶴 任彦 et al. 変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築.  -基礎と臨床 2020年9月号 特集:幹細胞・PRP・衝撃波−Biologic healingのエビデンス. 関節外科. 2020年9月. vol.39 No.9. 945-954

*5…Tadahiko Ohtsuru et al. 「Freeze-dried noncoagulating platelet-derived factor concentrate is a safe and effective treatment for early knee osteoarthritis」 Knee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy

新着記事

イベント

医療機関を探す

キーワードから探す

条件から探す

都道府県
北海道・東北
関東
甲信越・北陸
東海
関西
中国・四国
九州・沖縄
治療方法