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ASC

2020.10.7

ASC(脂肪由来幹細胞)治療とは

ASC治療とは?

ASC(脂肪由来幹細胞)治療とは、再生医療である幹細胞治療の一種です。本来は自然治癒が望めない軟骨などの組織が損傷した際、修復が期待できる再生医療の一つ(*1)として実用化が始まっています(*2)。

ASC治療は再生医療等安全性確保法のもと行われる再生医療であり、第二種再生医療等技術に相当します。申請書が厚生労働省に受理された医療機関のみが行うことのできる治療です。

 

 

 
ASC(脂肪由来幹細胞)は皮下脂肪組織から採取した幹細胞です。幹細胞とは、下記2つの能力を併せ持つ細胞のことです。

 

 

人間が多機能な人体へと成長できるのも、この幹細胞の多分化能と自己複製能があるためです(*3)。ASC治療は、この「細胞を作り出す力」を損傷部位に活用することで、損傷した組織の修復が期待できる再生医療です。

 

 

ES細胞との違い

ES細胞は受精卵の胚から作られる細胞です。胚は個体の最も初期の成長段階にある、生命の種のような存在で、ほとんどすべての体組織へと分化が可能な万能細胞といえます。ですが、ES細胞はその作製過程ゆえ、生命を摘みとる必要があるという倫理的課題を孕んでいます。よって実用化には高いハードルがあるのが現状です。

ASC(脂肪由来幹細胞)は患者自身の体の一部を採取して作製できるため、こういった倫理的課題はクリアしています。

 

iPS細胞との違い

iPS細胞は、京都大学の山中教授によって発見された人工多能性幹細胞です。こちらはES細胞と違い、患者自身の細胞を一部採取して作製されることになるので、ES細胞のような倫理的な課題をクリアしています。

ただし、iPS細胞はその分化能力の高さからどんな細胞にもなれますが、故に発癌性も認められています。現在研究が進められていますが実用化までまだ時間がかかりそうです。(2020年8月現在)

これに対し、ASC(脂肪由来幹細胞)は脂肪組織にある幹細胞で、脂肪・軟骨・骨・血管など、どの種類の細胞に変化するかがある程度絞りこまれており、癌化することは少ないと言われています。よって現段階ではiPS細胞よりも実用性が高いと言えます。

 

ASC治療の適応疾患

ASC治療は現在、主に「変形性膝関節症」などの関節疾患を対象に活用されています。「いまの治療効果に満足していないが、手術は受けたくない」という方を中心に活用が始まっています。

 

 

 

ASC治療に期待される効果

①抗炎症作用

ASCの属する間葉系幹細胞には、抗炎症作用があり、痛みや腫れを抑える効果があります。これは、間葉系幹細胞が分泌する様々な因子(サイトカイン)が、炎症の原因となっている過剰な免疫反応を制御する働きがあるからです。

とくに、制御性T細胞と呼ばれる白血球の一種は、ASCの注入によってその数が増えて働き、炎症反応を和らげる中心的な役割を果たすと考えられています。

また、炎症によって傷んだ組織についても、間葉系幹細胞によって活性化された様々な細胞群が組織修復に働きかけます。

 

(※疼痛軽減のイメージ図です。)

 

②組織の修復促進

ASCは骨・軟骨・脂肪組織や血管などへの分化能力があることがわかりつつあり、関節において失われた組織の回復が期待できます。

先述の通り、ASC治療は主に関節症の治療に活用されており、軟骨などの組織の再生が期待できます。ただし、注入すればそれだけで組織が修復するわけではありません。組織がきちんと形成されるには「その場所を保護する必要性」を体に伝える必要があります。そのためには、注入後にその部位に負荷をかけるストレッチや運動を行うことが不可欠です。

つまり、ASC治療とは、培養・加工した幹細胞を注入するだけで完了というものではなく、上述したような抗炎症作用によって痛みが軽減されている間にリハビリを行うことで効果的に組織の修復を目指す治療なのです。

 

 

ASC治療のメリット

 

①安全性が高い

患者自身の細胞を使うため、アレルギーや拒絶反応のリスクが低いことが特徴です。

 

②施術が簡便

お腹の表面を覆っている皮下脂肪から採取した細胞を使います。投与するときは注射で完了しますので、身体への負担が少なくて済みます。

 

ASC治療のデメリット

 

①自由診療となるため、費用は自己負担

自由診療になるため、費用は各医療機関によって変わり、100万円を超えることが多い治療です。正確な費用については各医療機関に直接ご確認ください。

 

②効果には個人差がある

新しい治療であるため、作用の仕組みなどについては未だ未解明な部分が多いと言わざるを得ません。つまり、思ったように効果が出ない可能性があるのです。

期待される効果などは、患部の状態などによって変わります。患部の状態を診察してもらい本治療で効果が見込めそうか、医療機関に確認してもらうと良いでしょう。

 

③未発見のリスク

ご自身の脂肪を利用した治療法のため、拒否反応やアレルギーリスクは非常に少ないと考えられ、深刻な有害事象は報告されていません。

とはいえ、新しい治療ということもあり臨床データがまだ少なく、今後新たなリスクが発見される可能性がないわけではありません。

 

ASC治療の流れ

厚生労働省の認可を受けている施設で加工を行った場合のASC治療の流れをご説明いたします。このうち患者様が医療機関へお越しいただく必要があるのは「①採取」と「⑤患部へ注入」のみになっています。

 

① 採取

ASC治療を提供している医療機関にて、ご自身の皮下脂肪組織を採取します。20mLほどが必要となります。

当日は局部麻酔を行い、専用の針で脂肪組織を採取し、厚生労働省認可の細胞加工センターに輸送されます。基本的に入院は不要です。

 

 

② 抽出

脂肪組織を採取しただけでは幹細胞以外の組織も付着しているので、幹細胞のみを培養できるように分離します。

コラゲナーゼやサーモライシンを配合した酵素溶液で処理することにより、幹細胞を含んだ細胞群を抽出します。この段階では幹細胞以外にも血球や脂肪組織由来細胞群が含まれています。

脂肪組織の塊から必要な細胞群だけを抽出する工程であり、これにより幹細胞のみを培養できる準備が完了します。

 

 

③ 培養

抽出した細胞群を、培養液で培養することで、脂肪由来幹細胞のみを増殖させます。

培養液とは、一般的に体液に近い液体であり、アミノ酸、糖分、成長因子など、幹細胞にとっての栄養を含んでおり、その数を200~300倍に増やすことができます。

培養中は顕微鏡下で細胞の状態を監視し、増殖の度合いを常にモニタリングしています。そのスピードに応じて、培養液を定期的に(概ね3日ごとに)交換、常に幹細胞が栄養を摂取できるようにしています。

 

 

④ 凍結保存

培養が完了したら、凍結保存用チューブ(※プラスチック製の液化窒素での冷却に耐えられる専用容器)に小分けにされます。凍結保存用チューブ1本につき500万個の幹細胞が入っており、1回の脂肪採取ごとに6本以上が作製されます。

この凍結保存用チューブを超低温(-150℃の液体窒素が発生させる冷気によって保存用チューブを冷やす方法)の液体窒素タンク内に置くことで長期保管が可能となるので、患者様は好きなタイミングで治療を受けることができます。

 

 

⑤ 患部へ注入

脂肪の採取からおよそ6週間後、培養された幹細胞は、脂肪採取を行った医療機関へ輸送され、それぞれの医療機関にて患者様へ注射を行います。

 

 

ASC治療を受けるには

下記のボタンからASC治療を提供している医院をしらべることが可能です。「自宅近くに提供医院があるか知りたい」「もっと治療の詳細を知りたい」「まずは医師の説明を受けたい」という方はぜひご覧いただき、お電話にて実際に治療についてお問い合わせ下さい。

 

 

 

※脚注

*1…関西医科大学雑誌 59巻 (2007) 2-4 号「ヒト脂肪組織由来幹細胞の分離と脂肪・骨・軟骨への分化  ー幹細胞の供給源としての脂肪組織ー」覚道 奈津子 et al.

*2…臨床スポーツ医学 Vol.37 No.7 「変形性膝関節症に対する再生医療を利用した保存療法の実際 – PRP・間葉系幹細胞・セルフリー療法 -」桑沢綾乃,仁平高太郎

*3…バイオメカニズム学会誌 32巻 (2008) 2 号「成長・発育のバイオメカニズム 総論」島津 晃

 

※参考文献

…厚生労働省「「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」の改正等について  2-(2)ヒト幹細胞等の定義について

…Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy, Vol. 59. No. 3 59(3):450―456, 2013脂肪組織由来間葉系幹細胞を利用した細胞療法―現状と展望― 中山 享之 加藤 栄史

「間葉系幹細胞の新しい機能 -免疫調節細胞としての間葉系幹細胞-」Kentaro Akiyama,et al 347ページ

…Tong Ming Liu et al:  Identification of Common Pathways Mediating Differentiation of Bone Marrow- and Adipose Tissue-Derived Human Mesenchymal Stem Cells into Three Mesenchymal Lineages

 

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