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変形性膝関節症

2021.9.13

変形性膝関節症に対する治療の種類について

 


取材先の医師とクリニック
 

西川 哲夫 先生

 

中山 寛 先生

 

井石 智也 先生

 


西川整形外科
リハビリクリニック

 

変形性膝関節症に対する保存療法

変形性膝関節症に対する治療は大きく分けて進行を遅らせる「保存療法」と、根本的な解決を試みる「手術療法」に分けられます。

変形性膝関節症の進行がそこまで深刻でない方の場合、いきなり手術を行うのではなく、まずは進行を遅らせる保存療法から治療を始めることが一般的です。

まずは代表的な保存療法である「①薬物療法」「②物理療法」「③運動療法」「④装具療法」「⑤ヒアルロン酸注射」をご紹介します。

 

①薬物療法

鎮痛剤や外用消炎剤(湿布)等を用いて痛みを和らげる治療を薬物療法といいます。

基本的には鎮痛剤(ロキソニンなど)の内服と外用消炎剤(湿布)を使用して痛みの軽減を目指します。また、漢方薬を使用する場合もあります。漢方薬には膝関節液の減少を促す効能を期待できるものがあり、炎症により水が溜まってしまうような方にはこういった漢方薬が効果的な場合もあります。

薬物療法そのもので膝関節の変形を改善することを目指すのではなく、薬物療法で痛みを和らげている間に後述の運動療法で筋肉を鍛えて膝にかかる体重を筋肉で支えられるようにして、膝関節そのものへの体重負荷を低減、症状の改善や治癒を目指します。

 

②物理療法

患部をあたためる温熱療法や、患部に通電を行う電気刺激療法などの治療法を物理療法といいます。どちらも主に鎮痛効果があり、血流を改善することによって循環が良くなり、抗炎症効果が促進されます。

薬物療法と同じように定期的に行い、鎮痛作用を利用して後述の運動療法で症状改善を目指すことが一般的です。変形や症状が深刻ではない変形性膝関節症に対し有効とされています。

 

③運動療法

ストレッチや筋力トレーニングによって脚の筋肉を鍛えることで膝への荷重を筋肉で受け止められるようにすることで膝の軟骨や骨の負担軽減を目指す治療です。

変形性膝関節症では痛みによって運動を避けることで膝の筋力が低下、その結果さらに変形性膝関節症が悪化するといった悪循環に陥ってしまうことも珍しくありません。正しい運動療法を行い膝まわりの筋肉をつけることで痛みと日常生活動作の改善が期待できます。

X脚やO脚など、変形の部位や程度に合わせてストレッチやトレーニングを行い、各人の弱っている部位を鍛える運動を行うことが大切です。運動療法は基礎的ではありますが非常に重要な治療法であり、前述の温熱療法と運動療法の併用によって、痛みだけでなく膝関節の可動域も改善されたという研究もあるほど*、変形性膝関節症に対して効果的な治療です。また、体重のコントロールも膝関節への負担を減らす目的で重要です。

人工関節や骨切り術といった手術を行う場合であっても、満足な結果を得るためにはこの運動療法が非常に重要です。

 

④装具療法

靴底のインソールや膝のサポーターによって痛みを和らげる治療を装具療法といいます。

足の片側が高くなっているインソールを使用する「足底板療法」では、膝への負荷を減らすことで痛みの除去や、変形性膝関節症のさらなる進行を防ぎます。

O脚の場合には膝の内側に体重負荷が集中しやすくなっており、内側の軟骨や骨に損傷が起こりがちです。そこで足底板で脚の角度を矯正することで、反対側に体重負荷を逃がすことで軟骨や骨のこれ以上の摩耗を防ぎ、痛みの軽減も期待できます。X脚の場合にはその逆になるように用います。足底板は靴の中にインソールとして入れるタイプのものが多いですが、屋内で使用できるものもあります。

また、膝に「サポーター」をつける装具療法もあります。変形性膝関節症の患部にサポーターをつけて生活し、膝を安定させることで膝関節のさらなる損傷と痛みを防ぎます。ただし、膝周辺の筋力を低下させることもあるので基本的に長期にわたる使用はお勧めしません。

 

⑤ヒアルロン酸注射

軟骨の成分でもあるヒアルロン酸を膝に注入して膝関節の痛みや炎症を抑え、関節の滑らかさを一時的に補う治療です。変形性膝関節症の治療としては一般的な治療法の一つです。

運動療法との相性も良く、ヒアルロン酸を注入して症状を緩和している間に膝関節付近の筋肉を鍛えたり、可動域を広げる訓練を行うことで変形性膝関節症の症状改善を目指すことができます。1〜4週間に1回のペースで注入することが多いです。

 

変形性膝関節症に対する、手術による治療

症状の進行度合いにもよりますが、手術による解決を目指す場合もあります。上述した保存療法で満足な結果が得られない場合に実施することが多いです。

変形性膝関節症に対する代表的な手術は3種類あり、「①関節鏡視下手術」「②骨切り術」「③人工関節置換術」になります。

 

①関節鏡視下手術

関節鏡と呼ばれる、関節用の内視鏡を膝に入れて内部をクリーニングする手術です。

変形性膝関節症によって軟骨や骨がぶつかり合うと、軟骨や骨、半月板のささくれや破片が関節内に散らばってしまい、膝の引っかかり感などが出現することがあります。関節鏡視下手術は、それらの破片を取り除くこと(クリーニング)でこの膝の引っかかり感を始めとした症状の緩和を目指す治療です。

また、関節鏡を膝に入れることで関節内の状況を直接確認できることもメリットです。変形性膝関節症の進行度を正確に把握でき、今後の治療方針決定に役立ります。

クリーニングという性質上、膝の変形をもとに戻したり、すり減った軟骨や骨を増やすことはできませんが、膝に小さな穴を2〜3箇所あける手術ですので、身体への負担は比較的軽いといえます。

 

②膝関節を温存する方法(骨切り術)

脛骨(すねの骨)や大腿骨(太ももの骨)の角度を矯正する手術です。

脛骨や大腿骨の変形を矯正し、体重負荷を関節の正常なほうへ移動させることで、痛みや症状の進行を食い止めます。例えばO脚の場合は膝の内側の軟骨や骨が摩耗・変形してしまいますが、骨の角度を矯正して体重負荷を膝の外側に移すことで症状の改善を図ります。

自分の膝関節や靭帯を残せるので術後にスポーツや体を使ったお仕事へ復帰しやすく、正座もできるように鳴ることが特徴です。

 

③人工関節置換術

損傷した膝の骨と軟骨を人工関節に置き換える手術です。削り取った骨表面には軽く錆びにくい金属を、削り取った軟骨部分には強度のある超高分子量ポリエチレンが使用されることが一般的です。変形性膝関節症が進行して膝が強く変形し、軟骨もほとんど失われた状態の方が選択されることが多い手術です。概ね一か月間の入院とリハビリが必要です。

また、人工関節を長期的に使用していくためには術後に人工関節が緩んでしまったり、損傷したりして再手術とならないよう、日常生活において注意が必要です。例えば、正座などで膝の曲げ伸ばしが大変な和式の生活や激しいスポーツへの参加は推奨されません。

身体に人工物をいれることは大きな決断が必要となりますが、歪んでいた脚が真っ直ぐになることで気分が前向きになれたり、億劫だった買い物や旅行が楽しめるなど、生活の質(QOL)の改善が期待できる手術です。今では年間9万人以上が受けるポピュラーな手術となります。

自己組織を活用した治療法

保存療法と手術療法以外に患者さんご自身の血液や脂肪といった自己組織を活用する治療が登場しています。

 

①自己血液を活用した治療法

変形性膝関節症に対する治療として自分の血液から作った成分を関節に注入する治療があります。入院不要・日帰りで行うことができます。

代表例として「PRP療法」があります。ご自身の血液から血小板を濃縮して膝へ戻すことで鎮痛・抗炎症作用を期待する治療です。「PRP」とはこの血小板が濃縮された液体を指す「多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)」という言葉の英語略です。このPRPを応用し、血小板由来因子を活性化・濃縮し凍結乾燥させた「PFC-FD療法」では、血小板に含まれる成長因子そのものを抽出して患部へ注射します。

これら自己血液を活用する治療法はヒアルロン酸に比べて持続的な抗炎症作用が期待でき、さらに傷んだ軟骨の修復も期待できます。保存療法と手術療法のすき間を埋める治療として注目されており、「保存療法では変形性膝関節症の症状がなかなか改善されないが、手術に進むか迷う」という方の間で活用が始まっています。

ただし、薬剤ではなく自己血液を活用するため効果には個人差があり、また自由診療であることから治療費は保険が適用できず自己負担となります。

 

 

②脂肪組織を活用した幹細胞治療

脂肪組織の幹細胞を利用する「脂肪由来幹細胞治療(ASC治療)」は、患者自身の腹部から少量の脂肪組織を採取し、細胞を増やした後に患部へ注射する治療法です。入院不要・日帰りで行うことができます。

幹細胞とは、幹細胞自身のコピーをつくる能力と、様々な細胞へ変化する能力を持つ細胞のことであり、幹細胞移植治療はこの幹細胞の特性を利用した再生医療です。脂肪由来幹細胞が属する間葉系幹細胞には、骨や軟骨、血管などへ分化する能力に加え、強い抗炎症作用と組織修復作用があります。

脂肪由来幹細胞治療はこの力を活用することで関節に必要な組織へと細胞が分化することで傷んだ軟骨の修復や、変形性膝関節症の痛みの抑制が期待できます。

少量の脂肪組織採取と注入で済むので身体的負担が少ない治療です。その特性から「保存療法は効かないけれど手術になかなか踏み切れない」「手術へ進む前に再生医療を試してみたい」という方を中心に活用が始まっています。

ただし、患者自身の幹細胞を用いた治療であるため効果には個人差があります。また、自由診療であるため治療費は自己負担になります。

 

 

 

 

※脚注

*1…「変形性膝関節症に対する温熱療法と運動療法の併用効果に関する研究」ヘルスプロモーション理学療法研究 1巻(2012)2号 田中真一 et al.

 

※参考文献

…Japanese Journal of Transfusion and Cell Therapy, Vol. 59. No. 3 59(3):450―456, 2013 脂肪組織由来間葉系幹細胞を利用した細胞療法―現状と展望―. 中山 享之 加藤 栄史

…Identification of Common Pathways Mediating Differentiation of Bone Marrow- and Adipose Tissue-Derived Human Mesenchymal Stem Cells into Three Mesenchymal Lineages. Tong Ming Liu et al.

…間葉系幹細胞の新しい機能─免疫調節細胞としての間葉系幹細胞─ 日本補綴歯科学会誌 8巻 (2016) 4 号. 秋山 謙太郎, 古味 佳子, 窪木 拓男

…「変形性膝関節症の治療としてのリハビリテーション」リハビリテーション医学 42巻(2005)2号 黒澤尚 et al.

…「変形性膝関節症に対する温熱療法と運動療法の併用効果に関する研究」ヘルスプロモーション理学療法研究 1巻(2012)2号 田中真一 et al.

…「変形性膝関節症の足底板療法の評価」日本義肢装具学会誌 22巻(2006)1号 清水新悟 et al.

…「ここが大事!下肢変形性関節症の外来診療」 南江堂

…「関節外科  基礎と臨床 6 運動器疼痛update」メジカルビュー社

…「公益社団法人 日本整形外科学会 「変形性膝関節症」」

…Osteoarthritis Cartilage 2009 September 2009Volume 17, Issue 9, Pages 1137–1143(S. Muraki. et al. )

 

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