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変形性膝関節症

2020.8.12/最終更新日:2023.4.5

変形性膝関節症の原因7つ|どんな人がなりやすいのか、医師が解説します。

取材先の医師とクリニック

松田 芳和 先生

(まつだ整形外科クリニック 院長)

変形性膝関節症の概要

変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)とは、主に加齢を原因として膝関節内の軟骨に少しずつ変性や摩耗が生じ、その結果として関節の滑膜や骨に変化を引き起こすような退行性疾患(徐々に悪くなる疾患)のことです。一般に膝の違和感から痛みへと発展し、最終的に極端なO脚への変形や歩行困難などの症状をもたらします。

変形性膝関節症の初期や早期においては痛みは無くても関節内では変化が生じているというケースもあります。実際に日本における変形性膝関節症の患者数は約2530万人程度とされており、そのなかでも自覚症状がある方は800万人ほどと言われているので(*1)、無自覚でも変形性膝関節症を発症していることがありますので、50代を過ぎたら要注意です。

変形性膝関節症の症状とは|初期〜末期の特徴を医師が解説

変形性膝関節症は、

  • ① 一次性(原発性):明らかな原因がなく、加齢や慢性的な刺激によって発症
  • ② 二次性(続発性):外傷や炎症性・代謝異常疾患などに伴って発症

の2つに分けられ、変形性膝関節症の多くは、なんらかの原因で徐々に進行する“一次性”の変形性膝関節症になります。(*2) この記事では変形性膝関節症を発症・進行させる代表的な原因をご紹介します。

変形性膝関節症の代表的な原因

加齢

変形性膝関節症の最も主な原因は加齢と言われています。

年齢を重ねるにつれて膝に繰り返し外力がかかり、軟骨や骨にダメージが積み重なっていきます。関節のクッションと潤滑材の役割をする軟骨が摩耗していき、変形性膝関節症が高度に進行すると軟骨が消失することもあります。

軟骨が摩耗して薄くなったり消失したりすることで、膝のなかの隙間が狭くなります。これが変形性膝関節症の始まりです。さらに進行することで軟骨がカバーしていた骨にも負担が強まり、反応として骨が異常増殖してトゲ状の骨「骨棘」を形成してしまうことも特徴的な所見です。

さらに、年齢を重ねれば筋力も自然と衰えます。もちろん膝を支える筋力も弱まりますので、もとは膝周辺の筋肉が負担していた体重負荷が軟骨や骨へと集中し、これらの組織を損傷させて変形性膝関節症を増悪させていきます。

とくに、変形性膝関節症を発症して膝に痛みを感じるようになれば、外出や運動を控えることでさらに筋力が低下、変形性膝関節症を一層進行させるという悪循環に陥りかねません。

このように加齢は変形性膝関節症の発症、そしてその助長を促す原因の代表とされています。

女性であること

変形性膝関節症は圧倒的に女性に多い疾患です。実際に、日本全国の変形性膝関節症患者は2,530万人いるとされていますが、そのうち女性は1,670万人、つまり患者の66%が女性と示唆されており(*1)、別の統計では変形性膝関節症の患者のうち70%が女性であるとも言われています(*4)。つまり性別に由来する原因があると考えられます。ここでは女性特有の変形性膝関節症の原因と思われる事柄をご紹介します。

ホルモン

その要因のひとつはホルモンにあると考えられます。

男性ホルモンの一種であるテストステロンは筋肉の形成に関わるホルモンですが、女性はこのテストステロンの血中濃度が少ないです。つまり、女性は男性に比べて筋肉が少ない傾向にあり、膝周辺の筋力も女性の方が平均的に少なくなっています。このことから、女性は膝にかかる体重や負荷を筋力で吸収しづらいので軟骨や骨へのダメージを受けやすく、その結果、女性の方が変形性膝関節症に罹患しやすいと考えられます。

 

また、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンは軟骨の形成に必要です。しかし、女性は閉経後、このエストロゲンの分泌量が減少してしまうため、閉経によるエストロゲン分泌量減少も女性特有の変形性膝関節症の原因と考えられます。

女性ホルモンは骨粗鬆症との関連も指摘されており、女性ホルモンが減少すると骨がもろくなりやすいため、膝の骨ももろくなることが想像されるので変形性膝関節症に発展する原因と考えられます。

身体的な特徴

そして、変形性膝関節症が女性に多い原因はホルモンだけではなく、女性特有の身体的特徴も影響していると考えられます。女性は男性と比べると骨盤が広い上に下肢の横揺れを支える筋力(中殿筋というお尻の筋肉)が男性に比べて弱いとされます。よって脚全体に”スラスト”と呼ばれる横揺れの外力が加わりやすく、これが膝に負担をかけてしまうのです。

 

ここまで述べた原因やデータから示唆されるように、女性は男性に比べて変形性膝関節症にかかりやすいといえます。ある程度の年齢を重ねられた女性であれば、変形性膝関節症にかかっていないか定期的にチェックを行い、予防を心がけることが理想的です。

肥満

年齢に関わらず発症する可能性があるのは、肥満です。特に急激な体重増加は、膝を痛めやすいので注意が必要です。

膝にかかる負担は、歩く時には体重の約3倍、階段昇降時には約7倍にもなるといわれています(*3)。つまり、体重が1kg増えると、歩く際に膝にかかる負担は約3kg、階段の昇降時は約7kg増えることとなり、急激な体重の増加は変形性膝関節症の大きなリスクとなります(*3)。体重が増えて膝に痛みを感じるのであれば、無理のない範囲で体重を落とすことを心がけましょう。

体重増加により膝を傷めると運動を避けてしまいがちですが、そのために運動不足になり、結果としてさらに体重が増加するといった悪循環に陥ることが少なくありません。散歩のような軽い運動すら困難なほど膝が痛い場合には早めに医療機関を受診しましょう。

O脚

O脚も変形性膝関節症の原因とされています。

O脚は、膝の内側(体の中心側)の太ももの骨とすねの骨の距離が、O脚ではない人と比べて近い状態です。よって膝の内側に体重負荷が集中することで軟骨や骨の損傷・変形を生じやすく、また、これらの骨の距離が近いことからそれぞれの軟骨が擦れやすいため、軟骨の摩耗を引き起こしやすいため、変形性膝関節症の原因となります。

また、O脚の方は下肢全体に“スラスト”という横揺れが出やすく、それがさらに膝に負担をかけることで変形性膝関節症を発症しやすくなります。

一度発症するとさらなる負担で内側の軟骨の変性や摩耗が生じ、骨が変形してさらに顕著なO脚になって変形性膝関節症を進行させます。初期の頃は外見上の変形しかないこともありますが、症状が進行すると、次第に痛みや曲げ伸ばしのしにくさを感じるようになっていき、正座ができないなど、日常生活に大きな影響を与えます。

膝への負担が大きい仕事

日頃から膝関節に負担のかかる生活や仕事をしている場合も、変形性膝関節症になりやすくなります。

具体的には、しゃがむ姿勢の多い農業や、重い荷物を運ぶ運送業、建設業、長時間立ちっぱなしで仕事を行う調理師や理髪師などの接客業は、膝への負担が大きい仕事といえます。(*3

また、サッカーやテニスなど、急に走り出したり立ち止まったりする動作の多いスポーツも、膝への負担が大きいため、日頃からこのようなスポーツを行っている方は注意が必要です。(*3

遺伝

変形性膝関節症になりやすい要因のひとつとして、遺伝もあることがわかっています。

過去に行われた疫学調査からは、「DVWA」と呼ばれる変形性膝関節症の発症に関わる遺伝子の存在が明らかになっており、このDVWAに特定の「SNP」と呼ばれる塩基(DNA)配列がある場合、変形性膝関節症の発症リスクが1.6倍になるとされています。(*3

外傷・感染

変形性膝関節症になる原因として、外傷や感染もあげられます。

例えば、感染や骨折、骨壊死、脱臼、靭帯や半月板の損傷といった外傷などが原因で、膝の関節を傷つけ、変形性膝関節症になることがあります。

変形性膝関節症を避けるには

ここまでご紹介してきましたとおり、変形性膝関節症の発症にはさまざまな因子が絡むものの、運動不足は共通する悪化要素のひとつと言えます。とはいえ、ご紹介の通り、膝の使いすぎや間違った使い方、過度な負荷は避けるべきです。

年齢とともに膝が痛み始めたけれども、どういう運動を避けるべきで、逆にどんな運動をするべきなのか、それぞれ以下の記事で医師取材のもとご紹介していますので、ご興味のある方はご参考までにご覧ください。

また、変形性膝関節症を避けるには、「靴選び」も大切と言われています。変形性膝関節症を発症してしまった方が履くべき靴や、変形性膝関節症の発症を防ぐための靴の選び方について、変形性膝関節症と靴に関する研究論文と医師への取材を通じてご紹介していますので、ご興味がございましたらご覧ください。

診断・治療方法

変形性膝関節症の診断や治療方法については、以下の記事でもまとめられていますのでご覧ください。

変形性膝関節症の治療法としては、ご自身の血液に含まれる成長因子と呼ばれる成分を利用した「PFC-FD™療法」や、ご自身の脂肪から採取した幹細胞を利用した「ASC治療」もあげられます。

これまで変形性膝関節症の治療は、主に薬物療法など症状改善を目指す「保存療法」と直接病原を取り除く「手術療法」の2つで行われてきました。

保存治療は長年行うことで、その効果がだんだん小さくなってくる場合があります。その際、一般的に次のステップとして手術が選択されることが多いのですが、手術に対しては多くの人が「痛そう」「できれば受けたくない」といった抵抗感があったり、治療を受けるハードルが高かったりと、保存療法と手術療法の間にはギャップがありました。

先ほど紹介したPFC-FD™療法やASC治療は、このギャップを埋める治療法として、近年活用されてきています。

ご興味がございましたら、こちらからPFC-FD™療法・ASC治療を扱っている医療機関をお探しください。

※注釈

*1…木藤 伸宏,小澤 淳也,金村 尚彦「変形性膝関節症 理学療法診療ガイドライン」理学療法学 第43巻 第2号 204~209頁(2016年)

*2…立花陽明(2005).「 変形性膝関節症の診断と治療」『 理学療法科学』20(3), pp235-240.

*3…小俣 孝一(編)(2020).『ひざ痛 変形性膝関節症 ひざの名医15人が教える最高の治し方大全 聞きたくても聞けなかった137問に専門医が本音で回答!』.文響社.

*4…川村 秀哉, 杉岡 洋一, 廣田 良夫, 井上 一, 黒坂 昌弘, 緒方 公介, 新名 正由, 藤井 克之「変形性膝関節症の疫学」整形外科と災害外科 1995年 44巻 1号 p.12-15

 

※参考文献

内尾 祐司(編集)(2019).『ここが大事! 下肢変形性関節症の外来診療』.南江堂.

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