目次
変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)とは
定義
変形性膝関節症とは、主に加齢を原因として膝関節内の軟骨に少しずつ変性や摩耗が生じ、その結果として関節を構成している滑膜や骨に変化を引き起こすような退行性疾患(徐々に悪くなっていくような疾患)のことです。
変形性膝関節症が初期や早期の場合、たとえ痛みは無くても関節内では変化が生じている、という場合もあるため無自覚でも変形性膝関節症を発症していることがありますので、50代を過ぎたら注意が必要です。
症状
主な症状は、膝を動かす時の痛みや、膝関節の腫れ、膝の曲げ伸ばしがしにくくなるといった症状です。
最初は、歩きはじめや立ち上がりの際に痛みを感じますが、人によっては「なんとなく歩きづらい」という違和感程度の場合もあります。
次第に階段を上ったり下りたりすることや、正座などの膝を深く曲げる動作が困難になり、進行すると横になっていても痛みを感じるようになることもあります。
主な原因
加齢
年齢を重ねるにつれて膝に繰り返し外力がかかり、ダメージが積み重なっていきます。さらに年齢を重ねるごとに筋力も衰えて膝を支える力が弱まり、膝関節へかかる負荷が強くなります。このように加齢とともに膝への負荷が積み重なることが変形性膝関節症の原因となります。
女性であること
変形性膝関節症は圧倒的に女性に多い疾患です。その要因のひとつはホルモンにあります。
男性ホルモンの一種であるテストステロンは筋肉形成に関わっていますが、女性はそのテストステロンの血中濃度が非常にすくないのです。そのため膝にかかる負荷を吸収する筋力が男性に比べて少なく、変形性膝関節症に罹患しやすいと考えられます。
また、女性ホルモンは骨粗鬆症との関連が指摘されています。女性ホルモンが減少すると骨がもろくなる骨粗鬆症になりやすく、膝においても骨の変形や損傷を引き起こしやすくなる傾向にあるため、変形性膝関節症にも関与すると考えられます。
そして、変形性膝関節症を引き起こす原因はホルモンだけではなく、女性特有の身体的特徴も影響していると考えられます。女性は男性と比べると骨盤が広いうえ、下肢の横揺れを支える筋力(中殿筋)が少し弱いことが特徴です。よって脚全体に”スラスト”と呼ばれる横揺れの外力が加わりやすく、これが膝に負担をかけてしまうのです。
このように女性には変形性膝関節症にかかりやすい理由が複数あります。年齢を重ねてきたら変形性膝関節症にかかっていないか定期的にチェックを行い、予防を心がけることが理想的です。
体重
年齢に関わらず発症する可能性があるのは、肥満などの体重による膝への過剰な負荷です。特に急激な体重増加は、膝を痛めやすいので注意が必要です。
膝にかかる負荷は、歩く時には体重の2.5~4倍、階段の昇降時には4~7倍にもなるといわれています。つまり、体重が増えると増加した分の2.5~7倍の負荷がさらに膝にかかると言われており、急激な体重の増加は変形性膝関節症の大きなリスクとなります。体重が増えて膝の痛みを感じるようであれば無理のない範囲で体重を落とすことを心がけましょう。
体重増加により膝を痛めると運動を避けてしまいがちです。そのため運動不足になり、結果としてさらに体重が増加するといった悪循環に陥ることが少なくありません。散歩のような軽い運動すら困難なほど膝が痛い場合には早めに医療機関を受診しましょう。
O脚
O脚は膝の内側に体重負荷が集中することで軟骨や骨の損傷・変形を生じやすいという特徴があります。また、O脚の方は下肢全体にスラストという横揺れが出やすく、それがさらに膝に負担をかけることで変形性膝関節症を発症しやすくなります。
一度発症するとさらなる負担で内側の軟骨の変性や摩耗が生じ、骨の変形も進行するためO脚がさらに悪化して変形性膝関節症を進行させます。
初期の頃は外見上の変形しかないこともありますが、症状が進行すると、次第に痛みや曲げ伸ばしのしにくさを感じるようになっていきます。
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※参考文献
…「ここが大事! 下肢変形性関節症の外来診療」内尾裕司 南江堂