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変形性膝関節症 人工関節

2020.9.15

変形性膝関節症に人工関節置換術を行うべきタイミング

取材先の医師とクリニック

松田 芳和 先生

医療法人社団nagomi会
まつだ整形外科クリニック

変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)とは

日々の生活習慣や動作など、長い年月をかけ、膝になんらかの負担や外的な力が加わり続けると、その結果として関節を構成している滑膜や骨、軟骨に変形や変性、摩耗をもたらすことがあります。このような状態を引き起こす疾患を変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)といいます。

症状としては、まずは痛みが挙げられます。初期においては、立ち上がり動作や歩きはじめに痛みを覚えることがありますが、歩き出してしまえば痛みが治まることが多いです。しかし、症状が進行するにつれ歩行中でも痛みを生じ、特に階段の上り下りが困難になったり、次第に立つことや座ることができなくなるほどに悪化することもあります。

人工膝関節置換術とは

変形性膝関節症に対し行われる人工膝関節置換術とは、摩耗や変性をきたした膝関節内の軟骨や骨を人工の関節に置き換えることにより、痛みをなくす手術のことです。

変形性膝関節症の場合、まずは痛み止めや湿布などの薬物療法、ヒアルロン酸注入、減量などの教育指導、筋肉訓練などの運動療法、温熱療法、電気療法といった保存的治療から行いますが、それらを行っても効果が不十分か一時的である場合、人工膝関節置換術を検討します。

 

変形性膝関節症に人工膝関節置換術を行うタイミング

変形性膝関節症は、いきなり手術を行うことはあまりなく上記に挙げた薬物療法、運動療法などの保存的治療から開始します。

保存的治療を行ってもなお、痛みが治まらない・歩くのが辛い・痛みのせいで外出が困難など、日常生活において大きな支障が生じている場合には人工関節置換術を受けることも視野にいれるべきでしょう。しかしながら、手術となると入院や術後のリハビリも必要となり、なかなかすぐには決心がつかないものです。では、どんな方が手術に踏み切ることができるのでしょうか。

 

どういった生活を送りたいか

最も大事なのは、本人が「何に困っていて、どうなりたいのか」ということです。

レントゲンやMRIを見る限り、そこまで変形性膝関節症が重症ではないけれど、「膝の痛みのせいで満足にゴルフができない」と考える方がいるとします。その方にとってはゴルフを痛みなくできることこそが重要であり、生きがいなのです。そのような場合、充実した生活を手に入れるために人工膝関節置換術を選択することがあります。

逆に、レントゲンやMRIによると変形性膝関節症の進行が顕著な方でも、「身の回りのことさえできれば良い」という方もいらっしゃいます。そういった方にとっては人工膝関節置換術は適した手術とは考えづらく、根本的な治療よりも、痛みを軽くすることに焦点を絞った治療を続け、「ひとまず生活ができる」という水準を目指していくことも珍しくありません。

 

変形性膝関節症の症状によって、何ができないのか、そしてそれができないことが人生にどのような影響を及ぼしているのかによって、人工膝関節置換術を選択するかどうかは変わってくるのです。

人工膝関節置換術とは、レントゲンやMRIの結果を見て機械的に手術の必要性を決めるものではなく、手術をすることでご自身が願う生活に近づくための方法なのです。手術を有意義なものにするためには、ぜひ普段から、思い描く生活ややってみたいことなどを思いつく限り、担当の医師に相談してみてはいかがでしょうか。

 

人工膝関節置換術のリスクを理解する

手術には怖いというイメージがありますが、実際に手術に臨む上でどういったリスクがあるのかをきちんと理解することが非常に重要となります。ここでは人工関節置換術のリスクをご紹介していきます。

 

感染症

手術時の切開に伴い、傷口から細菌感染を起こす可能性があります。ただし、これはすべての手術において起こりうるリスクです。人工関節の医学は近年の高齢化に伴い大きく進歩しており、様々な工夫によって細菌感染を起こすリスクは低くなっています。

人工膝関節置換術における感染症の発生確率は1~3%ほどであり、確率は決して高いものではありません。ただし、糖尿病や肥満などの生活習慣病をお持ちの方はかかりやすい傾向があるため、慎重に決断する必要があります。担当の医師とよく相談してから手術に進まれると良いでしょう。

 

血栓

人工膝関節置換術の手術の際は、ほかの外科手術と同様に出血が生じますが、その際に身体は血液の流出を防ごうとして血を固めようとします。また、手術中は身体を動かすことができないため、脚の下の方に血が溜まりやすくなり、溜まった血が塊となって”血栓”が生じ、血管をつまらせてしまうなどの重篤な症状を引き起こすことがあります。

血栓を100%防ぐことは難しいのですが、術前術中など、定期的にエコー検査にて血栓が生じていないかを確認すること、および抗血液凝固剤を用いることで必要以上に血液が固まりやすくなることを防ぐことができます。

 

再置換の可能性

人工膝関節は人工物であるため耐用年数があり、最初の手術からおよそ15~20年ほどでポリエチレンでできているインサートを交換する再置換手術が必要になることがあります。

ただし、使い方次第では30年くらい再置換せずに済む場合もあります。どのようにすれば長持ちするのかを担当の医師とよく相談されると良いでしょう。

 

緩み等の不具合

人工関節はインプラント(金属の部分)とインサート(ポリエチレンの部分)で構成されています。インプラントは骨より硬いために、時にインプラントが骨に沈み込むケースがあり、その結果、人工関節部分に緩みを起こしてしまうことがあります。また、ポリエチレンの部分が摩耗してしまったり、摩耗により出た粉が、膝の滑膜などを刺激して炎症を引き起こすこともあります。この場合は再置換手術が必要になります。

 

人工膝関節置換術を受けるか迷ったら

人工膝関節置換術は、痛みをなくすことが主目的の手術です。その効果は非常に大きいものでしょう。ただし、先述したようにリスクもありますので、きちんと理解・納得したうえで手術に臨むことが非常に重要です。

迷っている場合にはそのことを隠さず、「先生、こういったことで迷っているんですが…」ときちんと医師と相談し、納得できるまで話し合うようにしましょう。わからないことがあれば何でも質問し、それに答えてくれるような先生と手術に臨むべきだと思います。

もちろん手術ですので不安に感じることは少なくないでしょう。ですが、痛みが楽になって過ごせることや、無理のない範囲であればやりたいことができるようになる良い手術でもあります。変形性膝関節症のためにお困りの方にとって、人工膝関節置換術はとても優れた治療方法の一つと考えられます。医師とよく相談の上、治療方針を決定することをお勧め致します。

 

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※参考文献

…理学療法科学 20 巻 (2005) 3 号 「変形性膝関節症の診断と治療」立花陽明

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