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変形性膝関節症 人工関節

2020.8.12/最終更新日:2022.5.16

人工膝関節置換術を行うべきタイミングやリスクについて医師が解説

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人工膝関節置換術とは

人工膝関節置換術とは、主に変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)などの疾患によって摩耗や変性をきたした膝関節内の軟骨や骨を人工の関節に置き換えることにより、痛みをなくすことを目的とした手術のことです。

日々の生活習慣や日常動作など、長い年月をかけて膝になんらかの負担や外的な力が加わり続けると、その結果として関節を構成している滑膜・骨・軟骨といった組織が摩耗し、変形・変性をきたすことがあります。このような状態を引き起こす疾患を変形性膝関節症といいます。

変形性膝関節症の場合、まずは痛み止めや湿布などの薬物療法、ヒアルロン酸注入、減量などの教育指導、筋肉訓練などの運動療法、温熱療法、電気療法といった保存的治療から行いますが、それらを行っても効果が不十分であるか一時的な場合には、手術である人工膝関節置換術を検討します。

人工膝関節置換術を行うタイミング

変形性膝関節症は、いきなり人工関節置換術といった手術を行うことはあまりなく、上記に挙げた薬物療法や運動療法などの保存的治療から開始します。
しかし、保存的治療を行ってもなお痛みが治まらない・歩くのが辛い・痛みのせいで外出が困難など、日常生活において大きな支障が生じている場合には人工関節置換術を含む手術を受けることも視野にいれるべきでしょう。

しかしながら、膝に人工関節のような人工物をいれることに抵抗を感じる方もいらっしゃいますし、入院や術後のリハビリも必要な手術ですので、なかなかすぐには決心がつかないという方は少なくありません。そこでここからは、どのような方が人工関節置換術を検討すべきなのかご紹介していきます。

人工関節置換術を行うべきかどうかお悩みの方は、まずここでご紹介する条件にご自身が当てはまるかどうか考えてみてください。

どういった生活を送りたいか

変形性膝関節症の治療法を検討するにあたって最も大事なのは、ご本人が「何に困っていて」「どうなりたいのか」ということです。

レントゲンやMRIを見る限り、そこまで変形性膝関節症が重症ではないけれど「膝の痛みのせいで満足にゴルフができない」と考える方がいます。その方にとってはゴルフを痛みなく行うことこそが重要であり、生きがいなのです。そのような場合、充実した生活を手に入れるために手術療法である「人工膝関節置換術」を選択することがあります。

逆に、レントゲンやMRIによる診断で変形性膝関節症の進行が顕著だと判断される方でも、「身の回りのことさえできれば良い」と考える方もいらっしゃいます。そういった方にとっては人工膝関節置換術は適した手術とは考えづらく、根本的な治療よりも、痛みを軽くすることに焦点を絞った治療を続け、「人工関節置換術などの手術による根本的な治療はせず、ひとまず生活ができる」という水準を目指していくことも珍しくありません。

変形性膝関節症の症状によって「何ができないのか」、そして「それができないことが人生にどのような影響を及ぼしているのか」に応じて手術である人工膝関節置換術を選択するかどうかは変わってくるのです。

人工膝関節置換術とは、レントゲンやMRIの結果を見て機械的に手術の必要性を決めるものではなく、手術をすることでご自身が願う生活に近づくための方法なのです。手術を有意義なものにするためには、ぜひ思い描く生活ややってみたいことなどを、担当の医師に相談してみてください。

人工膝関節置換術のリスクを理解する

手術には怖いというイメージがありますが、実際に手術を検討するにはリスクをただしく理解することが非常に重要です。ここでは人工関節置換術のリスクをご紹介していきます。

人工膝関節置換術のリスク(1) 感染症

膝への人工関節置換術では手術時の切開に伴い、細菌感染を起こす可能性があります。ただし、これは人工関節置換術特有のリスクではなく、あらゆる手術において起こりうるリスクです。人工関節の手術に関する医学は近年の高齢化に伴い大きく進歩しており、様々な工夫によって手術による細菌感染リスクは低くなっています。

人工膝関節置換術における感染症の発生確率は1〜3%ほどであり、日本整形外科学会学術研究プロジェクト調査で報告された日本での初回人工関節置換術における手術部位感染の発生率は1.36%となっています。

ただし、糖尿病や肥満などの生活習慣病をお持ちの方は手術による感染症リスクが高まる傾向があるため、慎重に決断する必要があります。このような場合は、担当の医師とよく相談してから、人工関節置換術を受けるかどうか判断されると良いでしょう。

人工膝関節置換術のリスク(2) 血栓

膝の人工関節置換術の手術の際は、ほかの外科手術と同様に出血が生じますが、その際に身体は血液の流出を防ごうとして血を固めようとします。

また、手術中は身体を動かすことができないため、重力に引っ張られて脚の下の方に血が溜まりやすくなり、溜まった血が塊となって”血栓”が生じ、血管をつまらせてしまうなどの重篤な症状を引き起こすことがあります。

手術による血栓を100%防ぐことは難しいのですが、術前術中など、定期的にエコー検査を行って血栓が生じていないかを確認すること、および抗血液凝固剤を用いることで必要以上に血液が固まりやすくなることを防ぐことができます。

人工膝関節置換術のリスク(3) 再置換の可能性

人工膝関節は人工物であるため耐用年数があり、最初の手術からおよそ15〜20年ほどでポリエチレンでできているインサートと呼ばれる部品を交換する人工関節の再置換手術が必要になることがあります。

ただし、人工関節の使い方次第では30年くらい再置換手術をせずに済む場合もあります。どのようにすれば人工関節が長持ちするのかを担当の医師とよく相談されると良いでしょう。

人工膝関節置換術のリスク(4) 緩みなど不具合

人工関節はインプラント(金属の部分)とインサート(ポリエチレンの部分)で構成されています。インプラントは骨より硬いために、時としてインプラントが骨に沈み込むケースがあり、その結果、人工関節部分に緩みを起こしてしまうことがあります。

また、ポリエチレンの部分が摩耗してしまったり、摩耗により関節内に漏れたポリエチレンの粉が膝の滑膜などを刺激して炎症を引き起こすこともあります。この場合は人工関節の再置換手術が必要になります。

人工膝関節置換術を受けるか迷ったら

膝の人工関節置換術は、痛みをなくすことが主目的の手術です。その効果は非常に大きいものでしょう。ただし、先述したようにリスクもありますので、きちんと理解・納得したうえで手術に臨むことが非常に重要です。

迷っている場合にはそのことを隠さず、「先生、こういったことで迷っているんですが…」ときちんと医師と相談し、納得できるまで話し合うようにしましょう。わからないことがあれば何でも質問し、それに答えてくれるような先生と手術に臨むべきだと思います。

 

もちろん手術ですので不安に感じることは少なくないはずですが、人工関節置換術は行うことで痛みがなくなり楽に過ごせるようになりますし、無理のない範囲であればやりたいことができるようになる良い手術でもあります。

変形性膝関節症に悩む方にとって人工膝関節置換術はとても優れた治療方法の一つと考えられます。医師とよく相談の上、治療方針を決定することをお勧め致します。

 

また、手術を受けるか迷っている場合は、さまざまな治療法を検討の上、最も自身の症状や状況に適した治療法を選択することも重要になります。そのためには、変形性膝関節症の治療にはどのようなものがあるのか、知っておく必要があります。

変形性膝関節症の治療の種類について詳細が知りたい方は、ぜひ下記の記事もご覧ください。

変形性膝関節症に対する治療の種類や特徴について医師が解説

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※参考文献

「変形性膝関節症の診断と治療」理学療法科学20(3): 235-240, 2005 立花陽明

「TKA術後感染の治療戦略―感染の予防と診断―人工関節置換術後感染の疫学―日整会学術研究プロジェクト調査より」関節外科29(1): 10-14, 2010 正岡 利紀 et al.

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