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変形性膝関節症

2022.6.6/最終更新日:2023.9.22

【膝痛でお悩みの方へ】ヒアルロン酸注射の効果や費用相場について医師が解説

取材先の医師とクリニック


丸山 剛 先生

(小石川整形外科 院長)

膝の痛みに対するヒアルロン酸注射の効果について

ヒアルロン酸注射は、変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)などに代表される膝の痛みへの初期治療としてよく行われていますが、果たしてどのような効果があるのでしょうか。

本記事では、ヒアルロン酸注射の効果やメリット・デメリット、費用相場などについて詳しく解説していきます。

なお、「手術をしない新しい治療法」をコチラで特集しております。「ヒアルロン酸注射に何度も通っているが効果に疑問を感じている」「手術は受けられない」など、このようなお悩みがある場合にはあわせてご覧ください。

ヒアルロン酸注射とは

ヒアルロン酸注射は、主に変形性膝関節症による「膝の痛み」に対し用いられます。もともと体内にも存在しているヒアルロン酸を関節内に注射することにより、関節痛の緩和や関節の滑らかな動きを取り戻すことを目指す治療法です。

ヒアルロン酸とは、先述のとおり人体の関節内に存在する成分で、関節が滑らかに動くための潤滑油と、衝撃を和らげるクッション材としての役割を果たしています。そのため、関節内のヒアルロン酸が減少することは関節にとっての潤滑油やクッション材が減ることを意味し、膝の痛みなどの関節痛に繋がります。

膝の痛みにお悩みの方の9割は「変形性膝関節症」であるといわれています。(*1)変形性膝関節症に対して、ヒアルロン酸注射を行う(関節内のヒアルロン酸を補う)ことで膝痛の緩和が期待できます。

膝に注射を打っている様子

ヒアルロン酸注射の効果が期待できる疾患について

ヒアルロン酸注射は関節痛に対して有効であるとされています。

特に膝に痛みの出る疾患で代表的な「変形性膝関節症」は勿論のこと、膝以外にも「肩関節周囲炎(五十肩)」「関節リウマチによる関節痛」に用いられることが多くあります。これらの疾患に対しては保険診療でヒアルロン酸注射を行うことができます。

膝・肩・手の痛みに悩む女性

実施頻度

ヒアルロン酸注射は基本的に、まず週1回の間隔で連続5回行います。
その後は、症状の改善具合をみながら、医師の判断で注射を継続するかどうか決定します。
ただし、注射を5回打つまでに膝の痛みが改善した場合は、5回まで打たなくていいこともあります。

医師の判断によりヒアルロン酸注射を継続する場合は、痛みに応じて2〜4週間に1回程度の頻度で行うことが一般的です。

ヒアルロン酸注射のメリット

身体への負担が軽く済む

膝痛に対するヒアルロン酸注射は、これまでに約36年の治療実績があります。注射の際は、痛みを少なくするために細めの針を使用し、身体への負担を小さくしています(低侵襲治療)

また、保険診療で受診できるため費用負担も比較的少なく済ませることが可能です。

 

ヒアルロン酸注射の費用相場については、後述の「ヒアルロン酸注射の費用相場」をご覧ください。

変形性膝関節症による痛みや炎症の緩和を期待できる

先述にもあるように、ヒアルロン酸には衝撃を和らげるクッション材の役割があり、患部に注入することで痛みの緩和や関節内の炎症を抑制する効果が期待できます。

特に変形性膝関節症の初期段階の方にはヒアルロン酸注射が効きやすいとされています。

また、変形性膝関節症の治療のためには、ヒアルロン酸注射と並行して運動療法を行うことで膝の痛みの改善率が高まると言われています。

日本理学療法学術大会で発表された調査では、変形性膝関節症の患者33名(男性9名.女性25名)が「①ヒアルロン酸注射のみ、②運動療法のみ、③ヒアルロン酸注射+運動療法」で治療を行いそれぞれの効果を比較しました。結果、③の両方を併用した治療が他の単体で行う治療よりも関節痛が軽減し活動性やQOLの向上、精神面でも有意差があると考慮される結果になりました。(*5

ウォーキングをする女性

ヒアルロン酸注射のデメリット

効果は一時的な場合も

変形性膝関節症の初期段階であれば、ヒアルロン酸注射により症状がなくなる場合もありますが、ヒアルロン酸注射の効果が一時的な場合や、症状の進行具合によって効果が出にくい場合もあります

また、ヒアルロン酸注射により一時的に痛みが緩和したことで膝を酷使してしまい、これを長期間繰り返すことで症状が進行してしまうケースもあります。(*2) 先述にもあるように、症状の進行具合によってはヒアルロン酸注射の効果が出にくいこともある為、そのような場合は他の治療法を検討する必要があります。

どうしても症状が改善せず、日常生活に大きな支障が出ている方は、手術の検討が必要な場合もあります。

ヒアルロン酸注射を続けても症状が一向に改善されないという方は、今後の治療方針について担当医師とご相談ください。

患者に説明する医師

注射時の痛み

ヒアルロン酸注射を行う際に、痛みが伴うことがあります

ただし、ほとんど苦痛にはならないような痛み(チクッとするような痛み)です。

注意点

ヒアルロン酸注射は、日常生活が制限されるようなこともほとんどなく、手術などに比べ身体への負担が軽く済む治療法です。

しかし、ヒアルロン酸注射による生理的反応や、感染症のリスクを助長させないためには、ヒアルロン酸注射後、以下のことに気を付けましょう。

  • 注射当日は入浴せず、シャワーを浴びるだけにする
  • 注射後の激しい運動は控える

ヒアルロン酸注射とステロイド注射の違い

膝痛に対して行われる注射による治療は、ヒアルロン酸注射の他に、ステロイド注射も挙げられます。ステロイド注射は、ヒアルロン酸注射とどのような違いがあるのでしょうか。

上記にもあるように、クッション材であるヒアルロン酸は関節内に注射することで関節の滑りが良くなる効果などがあるのに対し、ステロイド注射には強力な抗炎症作用があり鎮痛作用についてはヒアルロン酸注射よりも即効性があるとの研究報告がされています。(*3

よって、ステロイド注射はヒアルロン酸注射やその他の治療で膝の痛みが改善しない場合に検討されます。また、水腫(膝に水が溜まっている状態)の有無や、膝の痛みの程度に応じて、最初にステロイド注射を行い、炎症や痛みを抑えてからヒアルロン酸注射による治療を行う場合もあります。

しかし、ヒアルロン酸注射には重篤な副作用がないとされているのに対し、ステロイド注射には強い副作用のリスクがあります。ステロイドを頻繁に投与することで逆に関節破壊を誘発したり、糖尿病のリスク増加などに繋がる可能性があります。

 

費用相場

ヒアルロン酸注射の費用相場は、75歳以上で1割負担の保険診療で行う場合、両ひざへの注射1回当たりで1000円程度になります。

ヒアルロン酸注射を一般的な頻度で実施する場合、まずは1週間ごとに5回注射するため、1ヶ月分の治療費は注射代だけで合計5000円程度が目安になります。

ヒアルロン酸注射の金額

ヒアルロン酸注射以外の注射治療「バイオセラピー」

ヒアルロン酸注射などの保存療法を行っても痛みが緩和せず、日常生活に大きな支障をきたしている場合、手術も検討した方がいいケースもあります。しかし、いきなり手術と言われても心理的ハードルが高く、「できれば手術はしたくない」と感じる方も多くいらっしゃるでしょう。

そのような方たちの新たな選択肢として「PFC-FD™療法」や「ASC治療」といったバイオセラピー(人の血液や細胞を利用した治療法)が、活用され始めています。

バイオセラピー イラスト 写真

上記のいずれの治療法も、ヒアルロン酸注射のように何度も通院したり、原則、手術や入院は必要ありません。

特に軽度~中等度の変形性膝関節症の方は、PFC-FD™療法やASC治療を行うことで、痛みの緩和や関節可動域の拡大などで高い効果を得られやすいことも報告されています。(*4)そのため、何年も変形性膝関節症に苦しんでいるけれど手術は受けたくない、という方や、頻繁なヒアルロン酸注射での治療が必要な方は検討してみてもよいでしょう。

ただし、施術後は併せて運動療法も取り入れることが推奨されており、その指導のための通院は別途必要になります。

これらの治療を検討したいという方は、下記ボタンからバイオセラピーを活用している医療機関を探すことが可能です。変形性膝関節症の治療では、まずは医師に相談して進行度に応じた治療を行うことが重要ですので、ぜひ下記より対象の医療機関を検索してみてください。

 

PFC-FD™療法についての詳細は

さらに詳しい内容についてはコチラの特集ページでご説明しています。もし現在の治療に満足できず、手術を避けたい場合、ぜひご覧ください。

  • 自分の疾患に有効なのか
  • どんな効果があるのか
  • 費用はどのくらいなのか

このようなお悩みをお持ちの方はぜひご覧ください。

PFC-FD™療法を受けられた患者さんインタビューが掲載されました。

重度(KL-4)の変形性膝関節症を患い、階段の上り下り、歩き始め、立ち上がりなどあらゆる日常生活動作で膝の痛みを抱えていた患者さま。

たくさんの医療機関をまわり治療を行ったそうですが、結果は思わしくなく「手術をするしかない」と言われ続けたそうです。

PFC-FD™療法の治療を選ばれた経緯や治療後の様子をご紹介しております。

治療に興味がある方はぜひご覧ください。

 

手術療法

骨切り術

脛骨(けいこつ:スネの骨)の一部を切り、人工骨プレートを挿入して脚の角度を矯正することで変形性膝関節症の進行や痛みを取り去ることが期待できる治療です。

骨に切り込みを入れて人工骨を入れてからしばらくボルトで固定する必要があります。変形性膝関節症の進行度があまりに重症でない場合に検討されます。

人工関節置換術

変形性膝関節症で傷んだ軟骨や骨の代わりに金属とポリエチレン等で構成された人工関節を入れるという大掛かりな治療になります。

変形性膝関節症の進行度が非常に重症な場合に検討されます。ヒアルロン酸やその他の保存的治療で効果が出ず、術後に屈曲制限が見込まれるためにスポーツを望まない場合などに検討されます。

人工関節置換術 イラスト

手術についての詳しい解説は下記の記事でも詳しく解説されています。

 

まとめ

変形性膝関節症による膝の痛みに対する適切な治療方法は、症状の進行度や治療を受ける方の環境、生活習慣などによって変わってきます。

本記事の中でもご紹介したように、ヒアルロン酸注射でなかなか症状が改善されない場合は、手術やバイオセラピーなど、他の治療法を検討したり、痛みの程度によっては最初にステロイド注射による治療を検討することもあります。

長年膝痛でお悩みの方や、手術を受けるべきかどうか迷っている方、どのような治療の選択肢があるのか知りたい方は、一度医療機関を受診し、お気軽にご相談いただければと思います。

 

|この記事をお読みのかたは下記の記事もご覧になっています|

 


※注釈

*1…小西 信幸(編)(2021).『ひざ痛 変形性膝関節症―自力でよくなる!―ひざの名医が教える最新1分体操大全』.文響社.

*2…小俣 孝一(編)(2020).『ひざ痛 変形性膝関節症 ひざの名医15人が教える最高の治し方大全 聞きたくても聞けなかった137問に専門医が本音で回答!』.文響社.

*3…Bannuru RR, et al. Therapeutic trajectory of hyaluronic acid versus corticosteroids in the treatment of knee osteoarthritis: a systematic review and meta-analysis. Arthritis Rheum;61(12):1704-11. 2009.

*4…大鶴任彦ほか(2020).「変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築」『関節外科』39(9), pp.945-954.

*5…迫田 勇一郎ほか「変形性膝関節症に対するヒアルロン酸注入及びSLR運動併用効果の検討―多施設間での運動機能、JKOM調査にて―」.『一般社団法人日本理学療法士協会 Vol.36 Suppl. No.2 (第44回日本理学療法学術大会 抄録集)』.

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