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変形性膝関節症

2022.7.15/最終更新日:2022.8.1

変形性膝関節症における靴選びのポイントについて医師が解説

取材先の医師とクリニック

変形性膝関節症において靴選びが大切な理由

本記事では、膝が変形し痛む「変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)」の方が履くべき靴について解説します。

変形性膝関節症とは徐々に進行していく整形外科疾患です。初めは歩き始めや立ち上がりの際に一時的な膝の痛みやこわばりなどの症状がみられるだけですが、症状が進行するにつれ階段の昇降などもスムーズに行えなくなり、横になっているだけでも痛みが生じることがあります。年々平均寿命が延びてきている昨今、健康で自立した生活を続けるためには、変形性膝関節症の予防や対策は重要であるといえます。

 

そして変形性膝関節症の予防や進行抑制のためには、適切な治療のほか、適切な靴選びも大切です。
舗装された固い道を歩くことは、膝関節に衝撃を与え、負担がかかるため、変形性膝関節症進行の一因となりえます。しかし適切な靴選びができれば、歩くときの衝撃から膝を守ることができるようになり、変形性膝関節症の予防や進行抑制が期待できるのです。

スニーカーを履いてウォーキングする男性

ここからは、変形性膝関節症の方が靴を選ぶ際に気を付けるべきポイントをご紹介します。

変形性膝関節症における靴選びのポイント

靴底が薄く、フラットで軽い靴

変形性膝関節症の方は、靴底が薄く(1cm程度)、フラット(かかと部分が高くないもの)で軽い靴を履くことをおすすめします。

膝の内側にかかるストレスを測る指標として、外部膝関節内反モーメント(KAM:external Knee Adduction Moment)とよばれるものがあります。そしてこの外部膝関節内反モーメントは、増加すると変形性膝関節症の発症と進行が起こりやすい傾向にあることが報告されています。(*1, 2)つまり、歩く際にこの外部膝関節内反モーメントが少ない靴のほうが、膝にかかる負担は少なく、変形性膝関節症の方に適した靴ということになります。

軽度〜中等度の変形性膝関節症患者を対象に、歩く際の外部膝関節内反モーメントの計測を行った研究では、

        1. かかとの高いしっかりしたサンダル(重さ:182~363g)
        2. 靴底が厚めのしっかりした靴(重さ:273~454g)
        3. 靴底が薄くフラットな靴(重さ:91~182g)
        4. 靴底が薄くフラットなサンダル(重さ:91g)

の4種類の靴において、比較的軽い「3. 靴底が薄くフラットな靴」と「4. 靴底が薄くフラットなサンダル」の2種類で外部膝関節内反モーメントが低い結果となったことが報告されています。(*3

このことから、軽度〜中等度の変形性膝関節症の方には「3. 靴底が薄くフラットな靴」と「4. 靴底が薄くフラットなサンダル」が、他の2種類の靴と比べて膝への負担が少なく、変形性膝関節症の発症や進行の予防になることが示唆されています。

 

ただし、重症の変形性膝関節症の場合(場合によっては中等度も)、軽い靴は適していますが、サンダルを履くと足元が安定せず膝への負担が増してしまいますので、避けたほうがいいでしょう。

歩く際に膝へかかるストレスの計測を行った4種類の靴

紐やベルトで足の甲がしっかり固定されている

紐やベルトのある靴は、足の甲までしっかり覆われ固定されるため、フィット感が増し、歩行が安定します。

フィット感がない靴を履いて歩くと、足元がぐらついて不安定になり、膝に負担がかかるため、変形性膝関節症が進行しやすくなってしまいます。

ヒールカウンターがしっかりしている

変形性膝関節症の方が靴を選ぶ際、「ヒールカウンター」もポイントになるでしょう。

ヒールカウンターとは、簡単に言えば靴のかかと部分に内蔵される硬めのパーツのことで、このヒールカウンターが入っており、かかと部分が硬く、型崩れしにくい構造を持った靴が変形性膝関節症患者の方向けと言えます。

ヒールカウンターがしっかりしていることで、歩く際の足の横ブレを防ぎ、歩行を安定させてくれます。

靴のヒールカウンター

シャンクが固い

シャンクとは、靴底と中敷(なかじき)の間に入っている金属部品のことで、「靴の背骨」とも呼ばれる重要な部分です。靴を履いた際に、足の土踏まずが乗る部分に入っています。

変形性膝関節症で膝が痛い方は、このシャンクが固くしっかりした靴を選ぶことをおすすめします。

靴のシャンク

私たちは歩行の際、足の指の付け根部分の関節(MP関節といいます)が曲がることでスムーズに前方への体重移動ができるようになっています。そのため歩行の際の動きをスムーズに行うには、靴もこのMP関節部分が足の動きに合わせて曲がることが大切です。

足のMP関節

しかし、シャンクが入っていなかったり、柔らかすぎる靴は、本来曲がるべきMP関節部分以外の箇所で曲がってしまい、足の動きを邪魔してしまいます。

シャンクありの靴とシャンクなしの靴の比較

また、シャンクがない靴は柔らかく、捻りやすいつくりになるため、歩く際にかかとが内側や外側に倒れやすくなり、結果として膝への負担も大きくなり、変形性膝関節症が進行しやすくなるリスクがあります。

シャンクありの靴とシャンクなしの靴の比較

シャンクは外側から見るだけでは、入っているかどうか判断できないことも多いです。変形性膝関節症の方が靴を選ぶ際は、靴底が適切な位置で曲がるかや、捻りやすくないかを確認するといいでしょう。

履くべきではない靴

ここまで、変形性膝関節症の方はどのような靴を選べばいいのかご紹介してきました。
そこで次に、変形性膝関節症の方が履くべきではない靴はどういったものか、ご紹介します。

変形性膝関節症の診断を受けた方は、膝に負担がかかりやすい靴を履いていないか、改めて見直してみましょう。

サイズが合っていない靴

変形性膝関節症の方は、サイズの合わない靴は避けるようにしましょう。

自分の足のサイズに合っていない靴を普段から履いていると、膝への負担がかかりやすく、変形性膝関節症を進行させてしまう可能性があります。

サイズというと、かかとから足指の最も長いところまでを測った「足長」を思い浮かべる方が多いかと思いますが、ここでいうサイズとは、母指と小指付け根部分を通って1周測った寸法である「足囲」も含みます。

足長と足囲

変形性膝関節症患者の多くは、外反母趾などの足部の変形を伴っています。(*4)またある研究では、変形性膝関節症患者の方とスニーカーの関係性を検証した結果、O脚気味の患者は外反母趾変形が見られ、適切なサイズよりも足囲が大きい靴を履いている傾向にあったとされています。(*5)これは、外反母趾になると足が靴に当たって痛むため、実際のサイズよりも大きめの靴を選ぶ傾向にあるためと推測されます。

しかし、適切なサイズよりも足囲の大きい靴を履いていると、歩行時に足が左右に動き安定しないため、変形性膝関節症を悪化させるだけでなく、外反母趾変形を助長するリスクもあります。(*5

さらにこの研究では、足長と足囲が適合したスニーカーを1週間装着した患者について、痛みと歩行能力について、一定の改善がみられたことも報告されています。(*5)変形性膝関節症の方は、自分の足長と足囲を含めた足のサイズを測り、自分の足に合った靴選びをするように心がけましょう。

 

靴を選ぶ際には(できれば足のむくみが少ない午前中に)実際に試着し、サイズ(足長・足囲)が合っているか、歩く際に痛みがないかなどを確認しましょう。適切なサイズは、足長についてはつま先に少し余裕があるもの、足囲はぴったりのものが目安になります。

特に足囲に関しては、実際のサイズよりも大きいものを選ぶ方が多い傾向にありますので、足の甲がしっかり固定されるよう、ぴったりのサイズを選ぶようにしましょう。

足に痛みが出てしまい、サイズがぴったりの靴を選ぶのが難しい場合は、後述の「足底板療法」にてご紹介する足底板の使用も検討するといいでしょう。

ヒールが高い靴

ヒールが高い靴も、変形性膝関節症の方は避けたほうがいいでしょう。

歩行時の膝関節内反モーメント(膝の内側にかかるストレス)に対するハイヒールの影響に関する研究では、健常女性が1cm、5cm、9cmの高さの異なるハイヒールを履いて歩行した場合、膝関節内反モーメントはヒールの高さに応じて増加することが報告されています。(*6

この結果は、ヒールが高い靴ほど膝に負担がかかる可能性が高いということであり、変形性膝関節症の発症や進行がしやすいことを示唆しています。変形性膝関節症の方が日常的に長時間ヒールの高い靴を履くことは、変形性膝関節症を進行させてしまう原因になりかねませんので、避けたほうがいいでしょう。

足底板療法

ここからは、変形性膝関節症と靴に関連した治療法「足底板療法」をご紹介します。足底板(そくていばん)とは、靴の中に入れるインソールのことです。

変形性膝関節症の進行を抑えるためには、自身の足に合った靴選びを行うことも大切ですが、靴だけでなく、その中に入れる足底板(インソール)にも変形性膝関節症の進行抑制効果を期待できます。
足底板を用いた治療は、実際に医療機関でも取り入れられている方法で、「足底板療法」と呼ばれます。

 

日本人にはO脚が多いといわれています。O脚は膝関節の内側に負担がかかりやすく、膝の内側の軟骨がすり減ってしまい、変形性膝関節症の症状が進行しやすい状態です。実際に、日本国内で膝痛を訴える方の約9割がO脚であるといわれています。(*7

そこでO脚の方は、膝関節の内側にかかる負担を外側に分散させるために、かかとの外側が高く作られている足底板を使用します。足底板によって脚の角度を矯正することで、膝にかかる荷重の方向を変えてストレスを分散、関節軟骨のこれ以上のすり減りを防ぎ、変形性膝関節症の進行を抑える効果が期待できます。

X脚の方の場合は、O脚とは逆にかかとの内側を高くし、脚の角度を矯正します。

O脚用の足底板とX脚用の足底板

足底板療法の変形性膝関節症に対する治療効果は、臨床研究においても検証されています。

ある研究では、変形性膝関節症もしくは内顆骨壊死症の患者123例について足底板療法の効果を評価した結果、症状が比較的軽い症例では81%、症状が進行した症例についても55%の割合で、症状の改善が認められています。(*8

このことから足底板を用いた治療は、特に軽度~中等度の変形性膝関節症患者に一層効果を発揮する傾向があることが示唆されます。

足底板療法を行う際は、医療機関によっては院内で足底板製作を行っている場合もありますが、かかりつけの医療機関で製作を行っていない場合は、足底板を作る設備のある他の医療機関を紹介してもらうことになります。足底板療法を検討したいという方は、まずは担当医師にご相談ください。

なお、医師の診断・処方をもとに足底板をつくる場合、医療保険が適用されます。

変形性膝関節症の新しい治療法「バイオセラピー」

足底板(インソール)を用いた治療は、軽度~中等度の変形性膝関節症に効果が確認されていることをご紹介しました。
同様に、軽度〜中等度の変形性膝関節症の方を中心に効果が報告され、昨今活用され始めている治療法が「PFC-FD™療法」と「ASC治療」です。(*9)これらは人の血液由来の成分や体細胞などを利用した「バイオセラピー」と呼ばれる治療法です。

PFC-FD™療法は自身の血液に含まれる血小板の働きを活用した治療で、対してASC治療は自身の脂肪に含まれる幹細胞を活用した治療です。これらPFC-FD™療法やASC治療自体は、通常2回の通院で治療が完了しますが、併せて運動療法を取り入れることでより効果を発揮しやすいとされています。

バイオセラピー実施後に積極的に運動することが難しい方でも、本記事でご紹介した「靴選び」に注意したり、「足底板療法」を活用することで日常生活に運動を取り入れやすくなり、相乗的な治療効果増大が見込めます。

これらの治療に際して、どのような運動が推奨されるかや、足底板を併せて使ったほうがいいかなどは、症状の進行度などにもよって異なりますので、かかりつけの医師にご相談ください。

膝に注射を打っている様子

これらの治療法について詳細を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
PFC-FD™療法(血液由来の成長因子を用いたバイオセラピー)とは
ひざ等への再生医療「(ASC)脂肪由来幹細胞治療」について解説

 

これらのバイオセラピーを検討される方は、下記ボタンからバイオセラピーを提供している身近な医療機関をお探しの上、医師とご相談ください。
変形性膝関節症の治療では、まずは医師に相談して進行度に応じた治療を行うことが重要です。どのような治療を選択すればいいかわからない、どのような治療法があるのか知りたいという方も、ぜひ医療機関にてご相談ください。

まとめ

変形性膝関節症の方は、症状の進行を抑えるために、適切な靴選びをすることが大切です。

普段何気なく履いている靴ですが、意外と自身に合ったものを履いていないケースは多くあります。特にサイズに関しては、実際のサイズよりも大きめのゆったりした靴を履いていることが多いです。
自分の足に合っていない靴を履き続けると、膝への負担が増してしまい、それが積もり積もって変形性膝関節症の症状が悪化してしまうことになりかねません。

膝への負担は靴選びによって軽減できますので、膝痛など、変形性膝関節症の症状にお悩みの方は、ぜひ靴選びから見直してみてください。

また変形性膝関節症は、早い段階で適切な対処をすることも重要です。膝の痛みなどの症状がみられる方は、まずは一度整形外科にかかることをおすすめします。

 

※脚注

*1…Miyazaki T, et al. (2002). Dynamic load at baseline can predict radiographic disease progression in medial compartment knee osteoarthritis. Annals of the Rheumatic Diseases. 61(7), pp617-622.

*2…Amin S, et al. (2004). Knee adduction moment and development of chronic knee pain in elders. Arthritis and rheumatism. 53(3), pp371-376.

*3…Shakoor N, et al. (2010). Effects of Common Footwear on Joint Loading inOsteoarthritis of the Knee. Arthritis Care and Research. 62(7), pp917–923.

*4…笠野由布子ほか(2014).「足部形態が歩行時下肢関節に及ぼす影響:外反母趾角に着目して」『理学療法学Supplement』41(2).

*5…清水新悟ほか(2006).「変形性膝関節症に対する足の調査と靴指導の評価―足のサイズとウィズが適合したスニーカーの効果―」『日本義肢装具学会誌』22(3), pp159-165.

*6…Barkema DD, et al. (2012). Heel height affects lower extremity frontal plane joint moments during walking. Gait and Posture. 35(3), pp483-488.

*7…「COLUMN1 O脚・X脚診断。」,『Dr.クロワッサン 関節痛を自分で治す。』銅冶 英雄監修,2018年2月15日号,p.28-29,マガジンハウス.

*8…川村秀哉ほか(1992).「変形性膝関節症に対する楔状足底板の治療効果について」『整形外科と災害外科』40(3), pp.1099-1102.

*9…大鶴任彦ほか(2020).「変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築」『関節外科』39(9), pp.945-954.

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