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変形性膝関節症 半月板 筋腱 膝蓋腱 スポーツ時の膝痛

2021.1.19/最終更新日:2023.7.31

「階段の上り下りで膝が痛い」と感じる代表的な疾患とは

 


取材先の医師とクリニック
 

二木康夫 先生

 

 

階段を上り下りするときに膝が痛みやすい疾患

膝に痛みを生じる疾患はさまざまですが、特に階段を上り下りする際に痛みを感じやすい疾患としては、下記が挙げられます。

階段昇降時に膝が痛みやすい疾患

変形性膝関節症
特発性骨壊死
半月板損傷
膝蓋腱炎(ジャンパー膝)

階段の上り下りは、平地を歩くよりも膝にかかる負荷が大きい(体重の4~7倍の負荷*)と言われています。そのため上記のような疾患が膝に異常をきたしている場合、階段の上り下りで特に痛みが出やすくなります。

本記事では「階段で膝が痛い…」と感じる方を対象に、これらの疾患の特徴や治療法について詳しくご紹介していきます。

また、膝の痛みを改善するためには、早期からのケア・対処が大切になります。
ぜひ本記事をご覧いただき、心当たりのある疾患がないかチェックしてみてください。

階段昇降時に膝が痛い代表的な原因

変形性膝関節症

概要

階段を登り降りする際に膝が痛い原因として最初に候補に挙がる疾患は「変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)」です。

米国の変形性膝関節症に関する疫学研究(OAI)では、WOMACスコアを用いて患者のどの活動が膝の痛みに最初に関連しているかの調査を行いました。痛みのスコア0から増加するにつれて「階段の使用」が最初に得点を獲得し、次に「歩行」「立っている」「横たわっている/座っている」「ベッドにいる」の順で続いた、とする研究データもあります。(*1

変形性膝関節症とは、主に加齢を原因として膝の痛みを引き起こす代表的な疾患です。全国に推定2500万人の患者がいると言われており、多くは女性に発症しています。この疾患は、症状が進行するにつれて軟骨が摩耗・変性し、最終的に脚が外側に曲がるO脚・内側に曲がるX脚へと進行していきます。

日本人に元々多いとされるO脚については、こちらの記事でも解説していますので詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

それでは、以下の項目で変形性膝関節症かどうかを確認してみましょう。

変形性膝関節症のセルフチェック

  • 年齢が40歳を超えている
  • 歩きはじめるときに痛みやこわばりを感じる
  • 正座やしゃがむ動作が難しい
  • O脚かX脚気味
  • 膝が腫れている(膝に水が溜まっている)
  • 体重が増加してから膝が痛い
  • 膝が伸びきらなくなった

※本記事は診断を行うものではありません。セルフチェックはあくまでも目安となります。正確な診断のためには整形外科で医師の診断を受けてください。

変形性膝関節症の症状について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

変形性膝関節症の症状とは|初期〜末期の特徴を医師が解説

注意点

変形性膝関節症の初期症状はそこまで重いものではありませんが、放っておくと年月をかけて徐々に悪化し、最終的には痛みや膝関節の変形のために歩くことすら難しくなる場合があります。早めに整形外科専門医にかかり治療や悪化予防に取り組むことが重要です。

治療法

初期であったり症状が軽度な場合には痛み止めや湿布などの薬物療法や運動療法といった治療の他、足底板による装具療法やヒアルロン酸注射などの保存療法で改善を目指します。

しかし、軟骨の摩耗や骨の変形が著しい場合や外出が困難なほど症状が深刻化している場合、膝関節の軟骨や骨を人工関節に入れ替える手術(人工関節置換術)も検討されます。

人工関節置換術 イラスト

変形性膝関節症に対する治療は多岐にわたります。

治療の種類やその詳細に関してさらに詳しく知りたい場合は、こちらの記事も併せてお読みください。

変形性膝関節症の治療法12選|リハビリから再生医療まで

 

また、最近では保存療法と手術の間の第3の選択肢として、血液や脂肪といった自己組織を活用した生物学的治療により組織の再生を期待する、バイオセラピーなどの治療法も登場しています。

こうした治療は、ヒアルロン酸注射などの保存療法では「効果を感じづらくなってきたけれど、手術をするのはちょっと怖い…」といった患者さまなどに活用され始めています。

血液を活用した治療法「PFC-FD療法」や脂肪由来の幹細胞を活用した「ASC治療」について知りたい方は、こちらのページも併せてご覧ください。

ヒアルロン酸が効かない方へ 手術のいらない新しい治療法

特発性骨壊死

概要

特発性骨壊死(とくはつせいこつえし)とは、何らかの原因で急に発生する骨の壊死です。骨が壊死する原因は、軟骨の下層の骨に微細な骨折(軟骨下骨骨折)が継続的に発生し、血流が途絶えることで起こるものだと推測されています。壊死した周囲は骨内部の炎症による腫れ(骨髄浮腫)を引き起こし、痛みやときに骨の陥没へと繋がることもあります。

明確な原因はわかっていませんが、最近では亀裂骨折(ひび)によって骨が壊死しているのではないかと考えられています。これは、内側半月板の後角(後ろ側)に加齢や外傷によって亀裂が入ることで半月板の衝撃吸収能力が減退し、膝の骨にかかる負担が増大して起こるというものです。

それでは、以下の項目で特発性骨壊死かどうかを確認してみましょう。

特発性骨壊死のセルフチェック

  • 軽微な外傷がきっかけで始まった膝の激痛
  • 水腫(膝に水が溜まって腫れる状態)がある
  • 安静時や夜間に膝に痛みが生じる
  • 年齢が50歳を過ぎている

※本記事は診断を行うものではありません。セルフチェックはあくまでも目安となります。正確な診断のためには整形外科で医師の診断を受けてください。

注意点

膝関節には擦るような力(剪断力)や体重負荷もかかり続けるため、微細であっても一度骨折が生じると自然治癒しにくく、次第に血流が分断されてしまい骨に栄養が届かなくなります。軟骨は関節液から栄養を受け取っているためしばらくは問題ありませんが、土台である骨が壊死してしまうために一定期間が経過すると軟骨は変性します。

治療法

初期であれば消炎鎮痛薬や内服薬による薬物療法や、足底板という外側が高くなっているインソールと杖を用いた装具療法を行い、進行を防ぐとともに痛みを抑えます。

インソール イラスト

このように壊死部の骨にこれ以上の負担がかからないように治療することで自然と壊死部が回復することもあります。

症状が初期を過ぎ、壊死した骨の陥没が激しいような場合には手術を検討することもあります。脚の角度を矯正することで壊死部への負担を軽減する「骨切り術」や、膝関節の骨と軟骨を人工物へ入れ替える「人工関節置換術」などが挙げられます。

20代など若い方で階段昇降時に膝が痛む場合

半月板損傷

概要

半月板損傷(はんげつばんそんしょう)は、膝の大腿骨(だいたいこつ:太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)の間に存在し、膝にかかる衝撃の吸収や膝を滑らかに動かす役割のある半月板という軟骨が損傷してしまった状態です。

20代などの若い年齢の場合には主に激しいスポーツによって損傷することがあります。損傷したときには激しい痛みを感じ、動けなくなるほどです。

また、年齢を重ねると半月板も衰えていきますので、50歳を過ぎた方であれば脚を踏み込んだだけでも半月板が損傷する可能性もあります。

それでは、以下の項目で半月板損傷かどうかを確認してみましょう。

半月板損傷のセルフチェック

  • 膝の曲げ伸ばしがしにくい、引っかかる感じがする
  • 一定の角度以上に膝を曲げたり伸ばしたりできなくなる
  • 水腫(膝に水が溜まって腫れる状態)がある
  • 激しいスポーツに取り組んでいる
  • 激しいスポーツはしていないが50歳を超えている

※本記事は診断を行うものではありません。セルフチェックはあくまでも目安となります。正確な診断のためには整形外科で医師の診断を受けてください。

注意点

半月板には血流が乏しく、損傷が自然に治癒しにくいことが特徴です。半月板損傷をそのままにしておくと半月板が吸収していた衝撃が膝関節にかかり続け、年月を経て先述の変形性膝関節症になってしまうという事態になりかねませんので、早めに整形外科を受診し治療を受けることが大切です。

※本記事は診断を行うものではありません。セルフチェックはあくまでも目安となります。正確な診断のためには整形外科で医師の診断を受けてください。

治療法

半月板は自己修復しにくい組織です。そのため、内視鏡を用いて損傷(断裂面)を縫合してつなげる手術や、損傷でささくれのようになった部分を切除する部分切除術といった手術を行うことが多いです。

半月板縫合術

半月板縫合術 イラスト

また、半月板を損傷した場合に周囲の滑膜という組織が炎症反応を起こすことがあります。その場合には炎症を鎮める目的として血液由来の生物学的治療による抗炎症作用を期待できる場合があります。

 

半月板損傷の詳しい症状や原因、治療法についてはコチラでも解説されていますので、症状のセルフチェックに当てはまることがある場合にはぜひご覧ください。

膝蓋腱炎(ジャンパー膝)

概要

膝蓋腱炎(しつがいけんえん)とは、度重なるジャンプ運動を原因とする疾患です。ジャンプを繰り返して罹患することが多いために「ジャンパー膝」「ジャンパーズニー」という別名で呼ばれることもあります。

この疾患の損傷部位である膝蓋腱は、膝蓋骨(いわゆる膝の皿と呼ばれる骨)の上下に存在し、太ももの筋肉とすねを結んでいる“腱”を指します。

バスケットボールやバレーボールなど、頻繁にジャンプ動作を行うスポーツで生じることが多いです。また、ジャンプ以外にも膝を曲げ伸ばしする動作を伴う運動で受傷することがあり、ランニングやサッカーなど様々なスポーツが原因となります。

通常は安静にすることで回復しますが、日常的にハードな運動を継続して行っている場合、修復が追いつかずに治療が必要となることがあります。

膝蓋腱炎は元サッカー日本代表の内田篤人選手が手術を受けたことでも知られている疾患です。継続的に十分な休息なくスポーツに取り組んでいる場合には注意が必要です。

それでは、以下の項目で膝蓋腱炎かどうかを確認してみましょう。

膝蓋腱炎のセルフチェック

  • 膝を伸ばして膝の皿の下か上を圧迫すると痛い
  • ジャンプ動作のあるスポーツに継続的に取り組んでいる

※本記事は診断を行うものではありません。セルフチェックはあくまでも目安となります。正確な診断のためには整形外科で医師の診断を受けてください。

治療法

十分に休息を取ることが初歩的な治療です。それでも良くならない場合は超音波療法やリハビリを行います。

膝蓋腱炎 休息 イラスト

稀ですが、最悪の場合に膝蓋腱の一部が壊死している事があり、その場合には手術が必要となります。より詳しい解説や予防法、自分でできるストレッチなどについてはコチラの記事でも解説しています。

まとめ

膝の痛みがある場合、できるかぎり階段の昇降は避けエレベーターやエスカレーターを使用しましょう。やむを得ず階段を使用する際は、手すりにつかまり身体を支えることで膝への負担を軽減することができます。

変形性膝関節症で痛い場合には、変形性膝関節症の治療をしなくてはいけません。膝蓋腱炎で痛い場合には、膝蓋腱の治療をしなくてはいけません。原因に応じた適切な治療が必要であり、そのためには正確な診断が重要になります。

膝の痛みは我慢せず、しかるべき診断を受けましょう。我慢してスポーツを続けてしまうと慢性化したり、最悪の場合には組織が壊死してしまったりします。

受診が遅くなるほど選択肢は狭くなりますが、初期段階であれば治療の選択肢は広いです。違和感を感じたら、速やかに受診するようにしましょう。

 

*参考

*1…Elizabeth M A Hensor , Bright Dube, Sarah R Kingsbury, Alan Tennant, Philip G Conaghan.Toward a clinical definition of early osteoarthritis: onset of patient-reported knee pain begins on stairs. Data from the osteoarthritis initiative.Arthritis Care Res (Hoboken). 2015 Jan;67(1):40-7.

『よくわかる膝関節の動きとしくみ』 伊能 良紀 秀和システム 2014

『スポーツ医師が教えるヒザ寿命の延ばし方』 小山 郁 アスキー 2007

 

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