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本記事では、膝の内側が痛む「鵞足炎(がそくえん)」と「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」の2つの疾患をご紹介しています。
これらの疾患は、症状が似ていますが、発症原因や治療方法は大きく異なります。
はじめに鵞足炎について詳しく解説していますので、ご自身の症状に該当するかどうか確認し、治療方法など参考にしてみてください。
膝の内側の痛み①「鵞足炎」
概要
鵞足炎(がそくえん)とは、膝の「鵞足(がそく)」と呼ばれる部位が炎症を起こしている状態です。
鵞足とは、膝から5cmほど下のすねの内側に位置し、脛骨(けいこつ:すねの骨)に縫工筋(ほうこうきん)、薄筋(はっきん)、半腱様筋(はんけんようきん)の3つがくっついている部位のことです。
この部位は、外見がガチョウの足に似ているという理由で鵞足という名前がつけられました。
これら3つの筋肉のうち、特に膝関節内側の疼痛の引き金となる筋肉は薄筋と言われています。
鵞足炎の引き金となる筋肉を鑑別するための調査では、歩行時や階段昇降時に疼痛を訴える鵞足炎と診断された男女17名を対象に、鵞足に集まる縫工筋、薄筋、半腱様筋に対して伸長ストレス(筋肉が伸び続けることでかかる筋肉へのストレス)を加え疼痛を誘発するテストを行いました。
この結果、最も鵞足炎の引き金となる筋肉は薄筋であるという結果になりました。(*6)
症状
鵞足炎の主な症状は痛みです。鵞足(膝から5cmほど下のすねの内側)を押すと痛みが生じたり、運動後に痛みが現れることがあります。痛みだけでなく腫れや熱感といった症状も見られることがあります。
深刻な場合には、安静にしていても鵞足が痛むことがあり、ズキンとした痛みを感じることもあります。
原因
上述の通り、鵞足は縫工筋、薄筋、半腱様筋という3つの筋肉がまとまってくっついている部位であるため、その構造上、動作負荷が集中しやすい特性を持っています。
これら3つの筋肉は、膝の曲げ伸ばしや膝から下を外側へひねる動作に関与しています。
よって鵞足炎は、膝の曲げ伸ばしを頻繁に行ったり、膝から下を外側にひねる(特に外側へのひねり)動作のある運動を継続的に行っているアスリートの方に多く見られる疾患です。
鵞足炎の原因となるスポーツは多岐にわたりますが、特に多いのがランニング、バスケットボール、サッカー、水泳の平泳ぎといった、膝に負担のかかるスポーツです。
特に下記のような要因が重なることで鵞足炎の発症リスクが懸念されます。
- サイズや形が合っていないシューズの使用
- 運動する際のフォームや方法が不適切
- 準備運動やストレッチ不足
- 運動不足解消のため急に運動を始める
- 体が硬い
- もともと膝に疾患がある
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治療法
鵞足炎の症状が現れ始めた時期(急性期)は、始めにアイシングによって炎症による熱感を取り除き、次に薬物療法で痛みを鎮めます。
このように炎症を抑える治療を最初に行わなければ、その後のストレッチに進めない為、始めに炎症抑制方法であるアイシングについてご紹介していきます。
アイシング
概要
鵞足炎の治療としてストレッチを行う前に、「アイシング」という方法を用いて炎症による痛みや熱感の抑制を目指します。
アイシングは、急性期(怪我や損傷の直後)に患部を冷却することで炎症による痛みや腫れ、熱感を軽減し、症状悪化を防ぐ方法です。特に急性の症状である熱を持った痛みに対して効果的です。(*5)
方法
ここでは、アイシングのやり方についてご説明いたします。
アイシングは、氷嚢や保冷剤を使って患部を冷やし、前述の炎症による痛みや腫れ、熱感の軽減を目指すと同時に、これらの症状悪化を防ぐことを目的としています。アイシングを実施する目安は、20分間が最も適していると言われています。(*5)
1.手のひらサイズのタオル1枚と氷水を入れる袋1つを用意します。
2.氷水を袋に入れて氷嚢を作り、手のひらサイズのタオルを水で濡らします。
3.患部に濡れたタオルをのせ、さらにその上から袋に入れた氷水(氷嚢)をのせて20分間冷やします。
4.20分後、タオルと氷嚢を患部から離し、体温が自然に元に戻るのを待ちます。
これより短い時間では患部の冷却が足りないため、急性の怪我で期待される炎症を抑制する効果が得られないと言われています。よって適切な冷却効果を得るためには、患部を20分間冷やし、患部を10~15℃程度低下させる必要があると考えられています。(*5)
前述のアイシングを行うと、以下のような皮膚の感覚が時間の経過とともに順番に起こるとされています。
アイシングを終了するタイミングは、最後の「感覚消失(麻痺:マヒ)」を目安にしてみてください。
1.強い冷感
2.熱くヒリヒリする(灼熱感)
3.疼痛
4.感覚消失(麻痺)
次に、アイシングの注意点についてご説明します。
注意点
前述の通り、鵞足炎による熱感や痛み、腫れの症状がある場合、氷嚢や保冷剤を使って患部を冷やすアイシングを行うと、これらの症状を抑制する効果があると言われています。
一方で、下記のような誤ったアイシング方法は鵞足炎の炎症とは別に、低温火傷や凍傷(皮膚が凍りついた状態)による皮膚の変色(紫色)や赤み、疼痛、水泡などを引き起こす危険性があります。
- 冷却温度を氷点下(0度以下)で行ってしまった場合
- 長時間の冷却で患部を冷やしすぎてしまった場合
- 肌に保冷剤や氷などを直接乗せてしまった場合
このような誤ったアイシング方法にならないようにするためにも、患部に長時間当てることは避け、保冷剤などは少し溶かしてから使用する、もしくはタオルに巻いて患部に当てるなどの工夫を行いましょう。
薬物療法
前述のアイシングによって患部の赤みを抑えた後は、消炎鎮痛剤の内服薬や塗り薬、湿布などの貼り薬によって痛みを鎮めます。
痛みを鎮め、膝を動かせるようになったら、次にご紹介する鵞足炎の治療と予防に効果的なストレッチへ移ります。
鵞足炎に有効なストレッチ
前述でご紹介したアイシングと薬物療法によって炎症が静まり、ある程度膝を動かせるようになったらストレッチを行います。
ストレッチにより鵞足にくっついている筋肉を伸ばすことで、筋肉とつながる腱に過度なストレスがかからないように改善します。
硬い筋肉が伸び切ってしまうと、脛骨に付着している腱に剥がれるようなストレスがかかってしまいます。これが炎症、つまりは鵞足炎につながるため、ストレッチを行い筋肉の柔軟性を上げ、炎症が起こらないようにしていきます。
それでは、鵞足炎の治療と予防に役立つストレッチの方法を2つご紹介していきます。
大腿後面のストレッチ
太ももの裏側の筋肉を伸ばして柔軟性を獲得し、鵞足炎を予防するストレッチです。
1.あぐらをかいて床に座ります。
2.片脚を伸ばし、もう一方はあぐらのままにします。
3.この状態で伸ばした脚の方へ体を倒し、10〜20秒の間、この状態を維持します。
4.伸ばした脚の裏側で筋肉が伸びるのを感じることができるでしょう。
これを10回以上繰り返します。
太もも内側の筋肉のストレッチ
次に、太ももの内側の筋肉を伸ばすストレッチです。
1.あぐらをかいて床に座ります。
2.片脚を伸ばし、もう一方はあぐらのままにします。ここまでは、前述の「大腿後面ストレッチ」と同様の姿勢です。
3.次は伸ばした脚のつま先を内側に倒します。
4.伸ばした脚の太ももの内側の筋肉が伸びるのを感じることができるでしょう。
こちらも10回以上繰り返します。
東海北陸理学療法学術大会での発表では、19人のスポーツ選手における鵞足炎の運動療法を行った結果、ストレッチのみで19人中9人(47%)が疼痛の消失を得られたとし、スポーツへの復帰は平均4.2週となりました。
一方で、疼痛が軽減されない、もしくは早期にスポーツを復帰希望する患者には、インソールと呼ばれる足のバランスを整える矯正装具を用いてストレッチを行ったところ、19人中10人(53%)が疼痛を消失したとし、スポーツへの復帰は平均5.4週となりました。
これらの治療方法はスポーツへの復帰率が100%とされ、復帰後の競技レベルも低下が見られなかったとし、鵞足炎に対する運動療法の第1の選択肢としてはストレッチが実施されるべきと発表しています。
また、テーピングを使用した場合も運動時や階段昇降時などの疼痛が軽減されることが確認されています。(*4)(*11)
再生医療を活用した治療法
様々な治療法を試しても治らない頑固な痛みや、大会が近いなどですぐに治療しなくてはならない場合には、再生医療である「PRP療法」や、その応用技術「PFC-FD™療法」などを活用することも選択肢として考えられます。
PRP療法は、私達の体の組織修復を促す「血小板」(血液に含まれている成分)を活用した治療法で、ゴルフのタイガー・ウッズ選手や野球の大谷翔平選手が受けたことで話題になった治療法でもあります。
そしてPFC-FD™療法は、このPRP療法を応用し、PRPに含まれる血小板から成長因子を取り出して患部に注射する治療法です。
PFC-FD™療法について、さらに詳しく知りたい方はこちらの特集ページをご覧ください。
下記ボタンからは、これらの治療を提供している全国の医療機関を探すことが出来ます。もし既存の治療以外の方法を探している場合には一度ご相談だけでもされると良いでしょう。
また、再生医療やその関連技術を活用した治療についてわかりやすい記事もございますので、ぜひ一度ご覧ください。
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再発予防
鵞足炎は再発しやすい傾向にあります。というのも鵞足炎の主な原因は、お伝えしたとおり動作の繰り返しや膝のオーバーユース(使いすぎ)にあるからです。
特に鵞足炎になりやすい方には、鵞足に負担のかかるフォームや癖があることがわかっています。
したがって、鵞足炎がある程度回復したからと言ってそのまま競技に復帰すると、一度壊れた鵞足に再度負担が集中し、すぐにまた鵞足炎になるという悪循環に陥ってしまいかねません。その為、このような再発防止にはテーピングを用いて鵞足部にかかる負担を軽減することも有効とされています。(*11)
まずは焦らずに鵞足炎をきちんと治すことはもちろんのこと、医師や理学療法士、トレーナーと共に、いかに再発しないようにフォームや癖を修正するかという点が非常に大事です。
また、使用しているシューズなどが正しく足にフィットしているかどうかを確認することも大切な再発防止策です。
鵞足炎のまとめ
鵞足炎は、痛みがいったん消えてもスポーツを再開すると再発を繰り返しやすい疾患です。再発や長期化を予防するためには、鵞足炎の根本的な原因を明らかにし、そこを改善しなくてはなりません。
動作の癖や脚の姿勢、筋肉の硬さなどを専門医や理学療法士にチェックしてもらい、正しい動作や姿勢を身に着けるようにしてください。また、シューズ選びやスポーツを行う環境にも注意を払うこと、そして鵞足炎予防のためのストレッチ運動を十分に行うことも大切です。
最後に、急な運動負荷と運動のしすぎ(オーバーユース)にも注意を払うようしてください。そうしたことが、鵞足炎を予防し、長くスポーツを楽しんでいただくコツといえましょう。
膝の内側の痛み②「変形性膝関節症」
概要
膝の内側が痛む疾患で、特に中高年の方に最も多くみられる疾患は「変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)」です。日本における変形性膝関節症の推定患者数は約2530万人にものぼると報告されており(*1)、一定の年齢を超えた方が、膝に違和感を覚えたり、膝が痛くなってきたりした場合にはこの疾患が疑われます。
特に、日本人にはO脚に伴う内側型変形性膝関節症が多いとされ、膝痛を訴える日本人のうち実に9割がO脚であるといわれています。(*2)
O脚は起立した時に膝の内側によけいに体重がかかります。
この状態が長年続くと膝の内側の軟骨の摩耗を引き起こし、内側において関節の隙間が狭くなるためO脚がさらに進行するとともに膝の内側が痛むという症状が出現します。
症状
変形性膝関節症の初期症状としては、まず歩く際や階段の昇り降り、しゃがむ時や椅子からの立ち上がりなど、膝を屈伸する動作での痛みが出てきます。
進行すると、次第に動きはじめだけでなく動いている最中にも膝が痛むようになり、そのうち歩行困難や階段の昇り降りができないほどに痛むようになり、最終的には横になって安静にしていても痛むようになります。
痛みによって次第に出かけること自体が億劫になり、筋力減少によってますます疾患(病態)を進行させるという悪循環に陥ります。
そのような状態になると、立つ・歩くといった移動動作に支障をきたした状態である「ロコモティブシンドローム」や、要介護手前の状態である「フレイル」となり、健康寿命を著しく短くしてしまうことになります。
変形性膝関節症の詳しい症状はこちらの記事でもご紹介していますので、心当たりのある方はご覧ください。
原因
変形性膝関節症の主な原因は「加齢」ですが、そのほかにも肥満、運動不足や運動のしすぎ、重労働、膝の外傷など様々な悪化要因があります。
年齢を重ねるにつれ膝関節の軟骨は徐々にすり減っていきますが、ある年齢になっても発症しない方と発症する方が存在するのはこの悪化要因が大きく関与しています。
こちらの記事で、変形性膝関節症の原因について詳しく解説されていますので、気になる方はぜひご覧ください。
治療法
変形性膝関節症の治療は、症状や進行度、個々の患者様のニーズに応じて選択されます。
治療法は主に保存療法と手術療法に大別されますが、最近では再生医療やその技術を応用した治療法の活用も進んできています。
ここからは、これら「保存療法」「手術療法」「再生医療を活用した治療」それぞれには具体的にどのような治療法があるのか、ご紹介していきます。
保存療法
変形性膝関節症の保存療法は、主に変形性膝関節症の進行が深刻でない場合に軟骨の擦り減りを遅らせることや膝関節の痛みの軽減、リハビリによる膝関節の筋力向上などを目的としています。
保存療法は、変形性膝関節症の治療の第一の選択肢として試みるべきであると言われています。(*7)保存療法にはいくつか種類がありますが、ここでは運動療法と薬物療法についてご紹介していきます。
運動療法
筋力強化やストレッチを主体とした運動療法は、有害事象のリスクがほとんどない為、変形性膝関節症の治療としてまず試してよい治療と言えます。
日本リハビリテーション医学会の学術集会では、運動療法であるストレッチや筋力トレーニング、有酸素運動(歩行など)は膝の疼痛や日常生活動作の改善に有効と発表しています。(*8)
運動療法については、こちらの記事で詳しく解説されています。
薬物療法
薬物療法には、消炎鎮痛効果を持つ内服薬や湿布、塗り薬などの外用薬、ヒアルロン酸注射などの関節内注射療法があります。
ヒアルロン酸注射は、関節の中にもともと存在し関節の潤滑油とクッションの役割を担うヒアルロン酸を関節に直接注入することで、抗炎症作用による除痛効果や軟骨の摩耗を少しでも遅らせることを期待する治療法です。
ヒアルロン酸注射の効果やメリット、デメリットについてはこちらの記事でもご紹介しています。
実際には薬を用いない保存療法(リハビリなど)と薬物療法を適宜組み合わせながら治療を行っているケースが数多くみられます。日本整形外科学会変形性関節症診療ガイドラインでは、非薬物療法と薬物療法の併用は必要であるとし、推奨度は国際変形性関節症学会(OARIS)で96%、日整会変形性膝関節症委員会で94%と強く推奨されています。(*9)変形性膝関節症に対しては、通常まずこれらの保存療法が選択されます。痛みが比較的軽度で生活に大きな支障が無い・もしくは検査により変形性膝関節症が軽度から中等度と診断された場合に適応となります。
前述以外にも変形性膝関節症の治療として行われる保存療法はいくつかありますので、ご興味がお有りの方はこちらの記事もぜひご覧ください。
手術療法
上記に述べた保存療法を一定期間行っても膝痛の改善が認められなかったり、軟骨の摩耗が進み骨にも変形を来したりしているような重度の変形膝関節症に対しては手術療法が選択肢の一つとなります。
変形性膝関節症に対する手術はいくつかありますが、ここでは代表的な手術である「人工膝関節置換術」に触れます。
人工膝関節置換術
人工膝関節置換術は、変形性膝関節症により摩耗したり変形したりした膝の軟骨や骨を取り除き、金属とポリエチレンの人工関節を設置することにより、痛みを取り除き、また、関節機能を取り戻すことを目的に行われる手術です。
膝の痛みで歩くことすら難しい場合、安静にしていても膝が痛むといった日常生活に著しい支障がある場合や活動的な日常(旅行がしたい、趣味のゴルフをしたいなど)を取り戻したいといった患者様のニーズにお応えする必要がある場合などに検討されます。
人工膝関節置換術は、除痛効果と長期の耐用性に良好な成績が報告されています。
人工膝関節置換術後に対する満足度の調査では、66歳~89歳の男女25膝(内訳は変形性膝関節症24膝、変形や痛みを引き起こす関節リウマチ1膝)を対象にしたところ、術後半年と術後1年の満足度を比較した結果、術後1年では72%が「大変満足」「まあまあ満足」と回答しました。変形性膝関節症に関しては、身体機能スコアでも術前55.2点が術後1年で73.3点と改善したと報告されています。(*10)
人工膝関節置換術の詳細やその他の手術について、より詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
変形性関節症の手術の他にもインソールやステロイドなど、様々な治療法が存在し、個々人の膝の状態に応じて選択されます。変形性関節症の治療の種類についてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
再生医療を活用した治療法
変形性膝関節症の治療に、保存療法や手術療法以外の第三の選択肢が登場しました。
それは、再生医療を活用した治療法で、患者様自身の体から抽出した組織(血小板、幹細胞など)を膝関節に注入するというものです。
これまで述べた保存療法と手術療法のギャップを埋める治療法として期待されています。
この再生医療を活用した治療法には、PFC-FD™療法などがありますが、ヒアルロン酸注射等と比較して長い消炎鎮痛効果があるとされ、およそ半年から1年に渡り効果が見込めます。(*3)
このような特徴から、「現在受けている保存治療には満足できないけれど様々な理由により手術は受けたくない、または受けられない」という方を中心に、このような再生医療を活用した治療法が選択されています。
さらに、PFC-FD™療法の詳しい治療法や気になる効果、費用などについて知りたい方は、こちらの特集ページをご覧ください。
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鵞足炎と変形性膝関節症は症状が似ているので注意
これまでご紹介してきたように「鵞足炎」と「変形性膝関節症」は症状が似ています。
先述でもお話した通り、鵞足炎は3つの筋肉がまとまった鵞足(筋肉の膝から5cmほど下がったすねの内側)に痛みを訴え、変形性膝関節症は膝の内側でも鵞足より少し上の部分、関節裂隙(関節の隙間)を中心とした部位に痛みを訴えます。
この鵞足炎と変形性膝関節症では、症状は似ているのですが、治療方法は異なりますので注意が必要です。
変形性膝関節症の治療法については、下記の記事でも詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
まとめ
膝の内側の痛みについて、鵞足炎と変形性膝関節症の2つをご紹介しました。
もし、「若年でスポーツの直後で膝の内側が痛み出した」というような場合には鵞足炎が疑われますし、「ある程度の年齢で膝が痛み出した」という症状であれば変形性膝関節症が疑われるでしょう。
ただし、膝の内側に痛みをもたらす疾患は他にもあります。スポーツ後の膝の痛みには「靭帯損傷」「半月板損傷」など、急を要する外傷の可能性もありますし、痛みが我慢できるからと放って置いたら実は変形性膝関節症の末期だった、などという場合もあります。
もし膝の内側に痛みを感じたら整形外科を受診されると良いでしょう。
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※脚注
*1...Yoshimura N, et al. (2009). Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. Journal of Bone and Mineral Metabolism. 27, pp620-628.
*2...「COLUMN1 O脚・X脚診断。」,『Dr.クロワッサン 関節痛を自分で治す。』銅冶 英雄監修 2018年2月15日号,p.28-29,マガジンハウス.
*3...大鶴 任彦 et al. 変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築. -基礎と臨床 2020年9月号 特集:幹細胞・PRP・衝撃波−Biologic healingのエビデンス. 関節外科. 2020年9月. vol.39 No.9. 945-954
*4...林 優 et al.「スポーツ選手における鵞足炎の臨床的特徴と我々の運動療法成績についての検討」 東海北陸理学療法学術大会誌 第23回東海北陸理学療法学術大会 https://www.jstage.jst.go.jp/article/thpt/23/0/23_0_O064/_article/-char/ja/(2023.8.9参照) *5…山根 基.大西 範和.「運動後のリカバリーにおける アイシングの有効な適用方法の検討」 https://www.jstage.jst.go.jp/article/descente/42/0/42_204/_pdf/-char/ja(2023.9.20参照) *6…赤羽根 良和.林 典雄.「鵞足炎におけるトリガー筋の鑑別検査」.理学療法ジャーナル 46巻2号 (2012年2月発行) https://www.jstage.jst.go.jp/article/cjpt/2002.29.2/0/2002.29.2_285_1/_pdf/-char/ja(2023.9.20参照) *7…立花陽明 「変形性膝関節症の診断と治療 」理学療法科学 20(3):235-240, 2005 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rika/20/3/20_3_235/_pdf(2023.9.21参照) *8…黒澤 尚. 「変形性膝関節症の治療としてのリハビリテーション ―運動療法ホームエクササイズの効果―」 2004年 第41回 日本リハビリテーション医学会 学術集会/東京 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrm1963/42/2/42_2_124/_pdf(2023.9.21参照) *9…津村 弘.変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン (日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版) https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/106/1/106_75/_pdf/-char/ja(2023.9.21参照) *10…清水 孝志.加藤 充孝.安良 興.青戸 寿之.村尾 浩樹.京 仁寿.「人工膝関節置換術後の患者アンケート調査」 中部日本整形外科災害外科学会雑誌.2013年56巻6号p.1351-1352 https://www.jstage.jst.go.jp/pub/pdfpreview/chubu/56/6_56_1351.jpg(2023.9.21参照) *11…川野 哲英.理学療法学「スポーツの分野から―機能学的な視点より―」1989年.16巻3号.p199-205 https://www.jstage.jst.go.jp/article/rigaku/16/3/16_KJ00001305953/_pdf(2023.10.2参照) ※参考 ...「ランニングにより生じる膝過労性障害の治療」日本医事新報 (4448): 60-64, 2009. 石橋恭之