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膝を曲げるときに痛む代表的な8つの疾患について、特徴的な症状・原因・治療方法を医師への取材を通じてご紹介します。膝の痛みにおけるそれぞれの症状の特徴を書いておりますので、当てはまるものがないかチェックしてみて下さい。
本記事は診断を行うものではございません。疑わしいと感じた場合は整形外科を受診しましょう。
疾患① 変形性膝関節症
概要
変形性膝関節症(へんけいせいひざかんせつしょう)とは、軟骨がすり減り、最終的には骨や関節、脚全体の変形までもを引き起こす疾患です。
変形性膝関節症の患者数は日本において約2530万人といわれており、60歳以上の有病率は男性で45%、女性では70%にものぼるとされています。(*1) ある程度の年齢で膝が痛むようになれば一度は疑ったほうが良い疾患といえます。
症状
階段の登り降り、しゃがみ動作や椅子から立ち上がるときなど、膝を曲げる動作で痛みが出ることがあります。
変形性膝関節症の初期では、朝の布団からの起きあがりの際や、歩きはじめなどで一時的に膝が痛んだり違和感を感じる程度の症状にとどまります。ですが、進行すると正座や階段昇降が困難となり、最終的には横になっていても痛むようになります。また名前のとおり脚が変形していき、日本人では衣服の上からでもわかるほどの極端なO脚へ変形することが多いです。
膝が痛いので徐々に外出や運動を避けてしまい、高齢であれば認知症のきっかけになりかねません。老化現象のひとつと楽観視せずにはやめに治療に取り組むことが大切です。
変形性膝関節症の症状は下記の記事にて詳しく解説されていますので、当てはまる症状がないかチェックしてみて下さい。
原因
主な原因は加齢とされています。年齢におうじて関節軟骨にダメージが蓄積され、変形性膝関節症に至ると考えられています。
また、変形性膝関節症は女性に多い疾患としても有名です。ホルモンや筋肉量、女性特有の骨格など、男性に比べ女性は発症しやすい因子を多く持っているとされ、患者の8割が女性とも言われます。
その他にも遺伝的要因、肥満、外傷なども発症原因になりうると示唆されています。詳細は下記記事にて紹介しています。ご自身やご家族の発症リスクが気になる方はぜひご覧ください。
治療
変形性膝関節症の治療は痛みをはじめとする症状と、解剖学的な進行度を加味して選択されます。
症状がこれ以上悪化することを防ぎ改善することを目的とする“保存療法”と、外科的な方法で原因にアプローチする“手術”に分けられます。最近では手術のない新しい治療も注目されており、コチラで特集していますのであわせてご覧ください。
以下に解説いたします。
保存療法
“保存療法”とは、一般的に手術以外の治療法の総称です。
代表的な保存療法は、基礎的で重要なリハビリやストレッチングなどの「運動療法」、痛み止めの内服や湿布をはじめヒアルロン酸注射などによる「薬物療法」などがあります。
変形性膝関節症による生活への支障が少ない、もしくは検査で変形性膝関節症の進行度がそこまで高度ではない、と判断されるような場合には保存療法が選択されることが多いです。
手術
変形性膝関節症の進行がかなり高度であるか、症状が重篤で日常生活に大きな支障が出ている場合には“手術”が検討されます。代表的なものに人工関節置換術があります。
人工関節置換術は、変形性膝関節症によって傷んでしまった膝の関節を人工の関節と入れ替える手術です。変形性膝関節症による痛みの低減、運動機能の回復を目指します。
変形性膝関節症に対する手術には他にも「骨切り術」「関節鏡視下手術」などがあり、本人のご希望・進行度・症状に応じて選択されます。
手術にない治療「再生医療や関連技術」
変形性膝関節症に対しては、再生医療やその関連技術が活用され始めています。薬剤ではないぶん効果に個人差がありますが、手術以外の治療としては比較的効果の持続期間が長いとされます。
このような効果を活かし、並行して運動療法に取り組んで膝の筋肉を鍛えることで、膝関節にかかる負荷を筋肉で軽減し、変形性膝関節症の進行予防や症状改善を目指すことが出来ます。
膝の再生医療に関しては以下の記事にて解説されています。「現在の治療に満足できないけれど手術はしたくない」というようなケースで活用されることが多く、実際に既存の保存療法で効果が出なかった方でも痛み低減が確認された、といった結果も一部で認められています(*2)。
下記記事でも変形性膝関節症と再生医療関連技術について詳しく述べていますので、気になる方はぜひご覧ください。
疾患② 半月板損傷
概要
半月板とは、膝関節において、大腿骨と脛骨の間に存在する「C」の形をした軟骨組織です。1つの膝に2つ存在し、膝を安定させるとともに滑らかな動きを助ける役割があります。
この半月板が損傷することを「半月板損傷」といいます。主にスポーツ活動により生じます。
半月板は膝の安定装置であるため損傷すると膝への衝撃をうまく吸収・分散できなくなり、様々な弊害をもたらします。
症状
半月板損傷の特徴的な症状は、痛みのほか、膝を曲げ伸ばしするときに「引っかかり感」を伴うことです。また、受傷直後は動けなくなりその場にうずくまってしまうほどの痛みを感じます。
半月板損傷が重度の場合、膝を一定角度以上に曲げ伸ばしできなくなる「ロッキング」という状態に陥ることもあります。半月板の一部が断裂・ちぎれてしまい、そのちぎれた部分が関節内に挟まることにより起きます。
半月板損傷は、治療を受けなくても痛みが治まるケースがありますが、自然に治ることはほとんどないため、上述した症状が残ってしまうことがあります。また、放置すると年月を経て「変形性膝関節症」へ発展することもあります。かならず整形外科へ受診するようにしましょう。
原因
半月板損傷は急な切り返しや他選手との接触など、膝に大きな負荷がかかる激しいスポーツ活動中に生じやすいです。例えばバスケットボールやラグビーといったスポーツが挙げられます。膝に強い衝撃がかかると半月板にもそれだけ負荷がかかり、耐えきれずに半月板が割けたり断裂するなどして受賞へ至ります。
ただし、スポーツ以外にも加齢によって半月板がすり減っていたり傷つきやすくなっている場合、軽い運動でも半月板が損傷します。年齢を重ねたら勢いよく踏み込まないよう注意しましょう。
治療
手術
半月板は他の体組織と比べて血流がすくなく自己修復能力がほとんど見込めず、損傷すると自然治癒しにくいです。そのため、手術による損傷部位の切除・縫合が選択されることが多いです。
スポーツ選手が半月板を損傷した場合、この手術から復帰するまでに概ね6ヶ月ほどかかりますので、重い怪我と言えるでしょう。
自己組織を活用した治療法(バイオセラピー)
患部の状況や医師の判断にもよりますが、半月板損傷に再生医療や自己組織を活用した治療『バイオセラピー』を行うことがあります。損傷した部位そのものの再生はなかなか難しいとされますが、炎症に対する沈静効果があり、症状が改善しやすい関節内の環境を整えてくれると考えられます。
ただし、効果には個人差があり、加えて、半月板損傷に対するバイオセラピーの実施数も少なくデータが乏しいため、原理や効果については未解明の部分が少なくありません。
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疾患③ 関節リウマチ
概要
関節リウマチとは、本来は体内に侵入したウイルス等を退治する免疫機能が複合する様々な原因から自分の体、とくに関節を覆う組織「滑膜」を攻撃してしまう免疫系の疾患です。
関節は滑膜という膜で覆われています。関節リウマチはその滑膜に長期間に渡る炎症が起き、軟骨や骨が破壊されてしまう免疫疾患です。
膝におきる関節リウマチでは痛みや腫れとして自覚されることがよくあります。
症状
関節リウマチの特徴は全身の様々な関節で同時多発的に腫れや痛み、変形が生じることです。具体的には、膝・手・足・肩・肘などのいくつかの関節で同時に症状が出たりします。
下記のような特徴が挙げられます。
- 左右対称に症状が出やすい(例:右膝左膝の両方で症状が見られる、など)
- 手の指が白鳥の首のように湾曲変形するなど(スワンネック変形)、手指を中心に外見的な変化が見られることが多い(例:下記イラスト)
- 関節がゴワゴワとこわばっている感覚がある
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膝は立つ・歩くという体重を支える器官のため、痛みに気づきやすいですが、実は全身に症状が出ていて検査したらリウマチだった、ということがあります。
原因
関節リウマチの原因は明確にはなっていません。ですが一卵性双生児のほうが二卵性双生児よりも共に発生する傾向が強かったり、罹患率の高い家系があるなど、遺伝的要因が古くから示唆されています。
その他に喫煙習慣、歯周病との関連が強く指摘されています。
治療
まず、上述の通り、関節リウマチは明確な原因が特定されていないため、根本的に治す方法は残念ながら見つかっていません。そのため対症療法的な治療を継続的に行い、進行を食い止め炎症を抑えることで問題なく日常生活ができる”寛解”という状態を目指す治療が一般的で、抗炎症薬や抗リウマチ薬などの投薬により炎症を防いで日常生活を送れるような状態を目指します。
加えて、近年の関節リウマチに対する治療では生物学的製剤(バイオ製剤)も注目されています。バイオ製剤は生物のタンパク質を応用して作られる薬品で、リウマチの関節破壊防止効果が優れているとされ、1割程度ほどの確率ではありますがバイオ製剤により完治する症例も認められているようです。ただし、破壊を抑えるということは免疫能力を抑制することでもあるため、肺炎や結核などの重症感染症への罹患には注意が必要です。
進行が激しく滑膜(かつまく:関節を水分で覆い保護する組織)や軟骨の破壊が著しい場合、人工関節置換術を行い損傷している関節部分を人工物に入れ替え進行を防ぐ、という方法もあります。
疾患④ 膝靭帯損傷
概要
靭帯とは骨と骨を結ぶ、主にコラーゲンで構成された繊維組織であり、関節の可動域を制限することで関節の強度を保つ役割があります。
膝関節には大腿骨と脛骨を結ぶ靭帯が4本通っており、そのうちのいずれか、もしくは複数が損傷・断裂することを膝靭帯損傷と言います。
症状
膝の靭帯損傷では、受傷した直後に激しい痛みが生じます。加えて、靭帯は関節を安定させる組織であるため、膝靭帯が損傷・断裂すると膝関節の不安定感を覚えたり、うまく膝を動かせない・膝に力が入らない、という症状が引き起こされます。この他には、膝関節に血が溜まって腫れることもあります。
膝靭帯の損傷は放置していても痛みが引いたり、膝関節が安定化する場合があります。ですが、放置して膝関節の痛みが引いても損傷や断裂から回復したわけではなく、膝の安定化装置は壊れたままの状態です。よって軟骨などの別の組織に負荷が偏って摩耗・損傷したり、長年放置することで変形性膝関節症にかかりやすくなるなど、別の問題につながることもあります。靭帯損傷の可能性があれば早めに診察を受けましょう。
原因
膝に大きな負荷がかかることで発生します。例えば、ラグビーやアメリカンフットボールなど、他の選手とぶつかり膝に大きな負荷がかかるコンタクトスポーツで生じることがあります。また、交通事故などで膝を激しくぶつけることで起きることもあります。
その他に加齢などによって靭帯の強度が弱っている場合には、ちょっとした負荷によって靭帯が損傷するケースもあります。
治療
多くの場合、ギプスやサポーターを使用するなどしてこれ以上の悪化を防ぎ、リハビリによって自己治癒を目指します。
ただし、損傷の箇所や程度によっては手術が必要なこともあり、膝に小さな穴を開けて関節鏡という関節用の内視鏡を用い、断裂した靭帯の縫合や再建を行うこともあります。
また、最近では再生医療やバイオセラピーを靭帯損傷の治療に活用する場合もあります。損傷部位に成長因子などを注入することで損傷した靭帯の自己治癒能力の促進を期待することもあります。
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疾患⑤ ジャンパー膝(膝蓋腱炎)
概要
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)とは、名前の通り、ジャンプ動作を繰り返すことで生じるスポーツ外傷です。一般に”膝の皿”と呼ばれる「膝蓋骨(しつがいこつ)」に付着して膝を曲げる役割を担う繊維性の結合組織である”腱”が損傷し痛んでしまう傷害です。
スポーツ動作によって膝の皿(膝蓋骨)に付着している腱という組織に、細かな損傷が蓄積されていきます。これは本来、適切な休息をとることで人体が本来持つ回復力で修復されます。しかし、スポーツ選手を筆頭に激しいスポーツを長期間、休む暇もなく続けているような方はこの細かな損傷が治らずに激しい炎症に発展、痛みを主な症状とするジャンパー膝(膝蓋腱炎)へと発展します。
症状
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の主な症状は痛みが中心です。とくに膝の皿(膝蓋骨)のすぐ上もしくはすぐ下を押すと痛みを覚えたり、重症の場合には安静にしていても膝の皿まわりが痛む状態になります。痛みの他、腫れたり熱を持ったりします。
特にうつ伏せになって膝を深く曲げようとすると、太ももの前のほうに強い痛みを感じ、その痛みから逃れるためにお尻が上がる、という尻上がり現象が見られるのが特徴です。
原因
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の主な原因は、膝の過度な使いすぎによるものです。
特に、この膝蓋腱の役割が膝を伸ばすことであり、その力が最も要求されるのが、名前の由来ともなっている「ジャンプ動作」となるので、ジャンプ動作を繰り返すことは膝蓋腱に大きな負担となります。そのほか、長時間走ることも原因となります。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)が好発するスポーツは、これらの動作を頻繁に行うようなバレーボール、サッカーなどが挙げられ、元サッカー日本代表の内田篤人選手もこのジャンパー膝に悩まされました。
治療
上述したように、ジャンパー膝(膝蓋腱炎)の原因は膝の使いすぎによるもののため、まずは安静にすることが大切です。その後、リハビリテーションを行ったり、再発を防止のために太ももや周辺の筋力トレーニングを行って他の筋力で体重負荷を支えられるようにするなどします。
その他、医療機関で受けられる治療としては超音波治療、手術、などがあります。
ジャンパー膝(膝蓋腱炎)についての詳しい説明は下記の記事でも解説していますので、興味のある方はご覧ください。
疾患⑥ ランナー膝(腸脛靭帯炎)
概要
通称「ランナー膝」と呼ばれる腸脛靭帯炎。主にランニングによる脚の使いすぎで膝が痛くなることからランナー膝と呼称されます。
ランニング以外でも発症することがありますが、過度な運動、つまり膝の使いすぎ(オーバーユース)による発症が多いです。
症状
ランナー膝(腸脛靭帯炎)の特徴は「膝の外側の痛み」です。
疾患名にも入っている”腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)”とは、太ももの外側に位置し、膝関節を通って脛骨(けいこつ:すねの骨)に付着している強靭な筋繊維です。過度な運動等でこの腸脛靭帯が膝関節と何度もこすれることで炎症を起こし、痛みとして自覚されます。
始めは運動中の痛み、もしくは運動後に痛みを感じます。悪化すると歩行しているだけでも痛み、ひどい場合には横になって安静にしていても痛む、という状況にもなりえます。
原因
ランナー膝(腸脛靭帯炎)の主な原因は、膝の過度な使いすぎによるもので、ランニング、サイクリングを過度に行うことでなるとされます。
通常はしばらく安静にすることで回復しますが、スポーツ選手であったり、スポーツに打ち込んでおり毎日のように膝を酷使してしまうと発症します。
その他、O脚や体が硬い方で発症しやすいほか、準備運動不足でも起きることがあります。
治療
原因の多くは膝の使いすぎです。よって、まずは安静にすることが大切であり、運動を行っている方であれば一定期間は運動を休止いただくことになるでしょう。
一定期間安静にしたのち、リハビリテーションを行うことが一般的ですが、痛みがかなり強い場合には鎮痛剤を使用したり、場合によっては体外衝撃波治療なども検討します。
詳しい解説は下記記事にて行っていますので、ご興味のある方はご覧ください。
疾患⑦ 鵞足炎
概要
膝が痛む疾患のなかで、特に膝の内側が痛む場合、「鵞足炎(がそくえん)」と呼ばれる疾患の可能性があります。
膝の“鵞足(がそく)”と呼ばれる部位が炎症を起こしている状態です。“鵞足”とは、膝内側の下5cmに位置し、縫工筋・薄筋・半腱様筋という膝の曲げ伸ばしに対し働く3つの筋腱がすねの骨にくっついている部位のことです。ガチョウの足に似ていることから“鵞足”と呼ばれます。
この「鵞足炎(がそくえん)」は主にスポーツに精力的に取り組んでいる方に多い疾患です。ランニングなどの膝の曲げ伸ばしを伴う運動に、十分な休息を取らずに取り組んでしまうこと、つまりは膝のオーバーユース(使いすぎ)により発症することになります。
症状
上述の通り、膝の内側に痛みを覚えます。特徴的な症状は以下のようなものになります。
- 膝の内側5cm下を押すと痛みを感じる(圧痛)
- 膝の曲げ伸ばしの際に膝の内側が痛む
- 運動後に膝の内側が痛む
- 痛みだけでなく腫れを伴う
- 痛む部位に熱を感じる(熱感)
- 深刻な場合、安静時にも痛む
膝の内側に「ズキン」とした痛みを覚えます。
原因
鵞足炎の原因は、先程も述べたように過剰な運動に寄る膝のオーバーユース(使いすぎ)です。発症しやすいとされるスポーツの代表例はランニング、バスケットボール、サッカー、水泳の平泳ぎなどが挙げられます。
その他に以下の因子も挙げられます。
- サイズの合っていないシューズ使用
- 運動する際のフォームや方法が不適切
- 準備運動やストレッチ不足
治療
鵞足炎の原因が膝のオーバーユースであることから、急性期、つまり鵞足炎になりたての頃は、安静にして十分な休息を取ることが必要です。その他に氷嚢を使用してアイシングなども良いでしょう。
症状が落ち着いてきたらストレッチやマッサージ等に取り組み、可能であれば理学療法士やトレーナーから鵞足炎になりにくい運動の癖をつけることで再発を防止する必要があります。
鵞足炎の詳しい症状・原因・治療法については下記の記事で解説を行っていますので、ご興味があれば御覧ください。
疾患⑧ ベーカー嚢腫(のうしゅ)
概要
ベーカー嚢腫(のうしゅ、嚢胞=のうほう、とも)は、膝裏にぽっこりとふくらみができてしまう疾患です。
内容物は関節にもともと存在する液体ですが、異常により膝裏に液体が溜まってしまうことで生じます。
症状
膝を曲げたときの違和感や痛みが症状として挙げられます。また、膝裏が腫れていることも代表的な自覚症状で、腫れが握りこぶし大まで大きくなることもあります。
このように腫れがかなり大きくなっていたり、重篤な場合には、膝の裏側を足に向かって走る坐骨神経を圧迫して「足がしびれる」という状態にも陥ることがあります。また、この嚢腫(のうしゅ)に圧力がかかり破裂する場合もあり、ふくらはぎが傷んだり腫れたりしますが、経過観察で軽快することもあります。
原因
関節内にはクッションのように水分を含んだ滑液包(かつえきほう)とよばれる組織がありますが、なんらかの原因でその一部が癒着したりして異常に膨らむことが原因となります。
ベーカー嚢腫の9割で変形性膝関節症や関節リウマチを併発しているとされ、それらの別の疾患の影響でできると推測されています。
治療
対症療法としては穿刺(せんし)と呼ばれる針で水を抜く治療を行いますが、何度も繰り返すことがあり、その場合は嚢腫ごと外科的用法で摘出することも検討されます。
ですが、上述したようにベーカー嚢腫は別の疾患のサインとして生じることが多いため、他に膝に疾患がある場合にはその疾患の治療を行いつつ、ベーカー嚢腫については穿刺などを行いながら経過を見る、という治療に留める場合もあります。
まとめ ひざを曲げると痛い場合
速やかに適切な治療を受けることが大切です。放置していると、膝の痛みや症状が悪化したり、そういった症状が仮に収まったとしても、年月を経て何かしらの疾患に発展するなどのリスクがあります。
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手術のいらない再生医療やバイオセラピーに興味がある方は、下記ページもぜひご覧ください。
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※参考文献
…「慢性関節リウマチ膝関節における骨・軟骨移行部の病態に関する研究」末長 敢
…「関節リウマチ患者における喫煙者の割合」臨床リウマチ22巻(2010)1号 岩田 康男 et al.
…「1.関節リウマチの遺伝的要因」日本内科学会雑誌101巻(2012)10号 山本 一彦 et al.
…「関節リウマチにおける生物学的製剤の単剤療法」臨床リウマチ32巻(2020)2号 松野 博明 et al.
…Heiberg MS, Koldingsnes W, Mikkelsen K, et al. The comparative one-year performance of anti-tumor necrosis factor alpha drugs in patients with rheumatoid arthritis, psoriatic arthritis, and ankylosing spondylitis: results from a longitudinal, observational, multicenter study. Arthritis Rheum. 59(2): 234-40. 2008※脚注
*1…Yoshimura N, et al. (2009). Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. Journal of Bone and Mineral Metabolism. 27, 620-628.
*2…大鶴 任彦 et al. 変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築. -基礎と臨床 2020年9月号 特集:幹細胞・PRP・衝撃波−Biologic healingのエビデンス. 関節外科. 2020年9月. vol.39 No.9. 945-954
…Robert B. Bourne, MD, FRCSC,corresponding author Bert M. Chesworth et al. Patient Satisfaction after Total Knee Arthroplasty: Who is Satisfied and Who is Not? Clin Orthop Relat Res v.468(1); 2010 Jan