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変形性膝関節症

2022.1.13/最終更新日:2022.8.1

変形性膝関節症のリハビリテーション(運動療法)11選|医師解説

取材先の医師とクリニック

変形性膝関節症に対する運動療法とは

変形性膝関節症(へんけいせいしつかんせつしょう)は、加齢などにより蓄積した膝への負荷により、膝の軟骨がすり減って炎症を起こし、痛みや腫れといった症状を引き起こす疾患です。

膝の関節には、関節軟骨や半月板(はんげつばん)という軟骨組織があり、骨と骨の間でクッションのような役割をしています。変形性膝関節症は、膝への度重なる負荷によってこれらの軟骨組織がすり減り、軟骨組織が削れて生じた摩耗片などが、膝関節を包んでいる滑膜(かつまく)を刺激して炎症を起こす疾患です。

変形性膝関節症が進行すると痛み以外にも膝の可動域(曲げ伸ばし可能な角度)が狭くなり、膝をスムーズに曲げ伸ばしできなくなったり、歩行距離も短くなるなど、次第に日常生活に支障をきたすようになります。

 

変形性膝関節症における運動療法は、運動によってこれらの症状改善を図る治療方法です。

変形性膝関節症により膝に痛みが出るようになると、安静にしたり外出を控えたりするなど、脚を動かさなくなりがちです。すると、膝を支える筋力が低下、膝関節への負担が増え、症状が悪化するという悪循環に陥りがちです。また、運動不足による肥満も、症状悪化の要因のひとつです。

適度な運動は、膝を支える筋肉を鍛えたり、膝関節の動きを改善することができる上に、肥満も防ぐことができ、変形性膝関節症の症状改善に効果的です。

 

OARSI(国際変形性関節症学会)や日本整形外科学会(2011年策定)、米国整形外科学会(AAOS:American Academy of Orthopedic Surgeons)が発表した変形性膝関節症のガイドラインでは、変形性膝関節症の治療における運動療法の中でも「可動域拡大」「筋力強化訓練」「有酸素運動」の3つを行うことを推奨しています。(*1, 2, 3) 本記事ではそれぞれどのような運動を行えばいいのか、具体的な運動方法を例とともにご紹介していきます。

 

ただし、膝の痛みが強かったり、腫れていたり熱を持っている場合、体調がすぐれない場合は無理をしないようにしましょう。また、血圧が高い方や持病がある方は、医師にご相談の上で取り組むようにしましょう。

説明する医師

可動域拡大訓練

変形性膝関節症になると、膝関節周辺の靭帯(じんたい)や関節包(かんせつほう:関節を包んでいる膜)、筋肉などが固くなってしまい、可動域(膝を曲げ伸ばしできる角度)に制限が出てしまいます(拘縮:こうしゅく)

さらに膝の痛みなどがある場合、安静にして膝を動かさない状態が続くと、拘縮が進み、膝の可動域はますます狭くなってしまいます。すると、正座やしゃがむといった動作が難しくなったり、より重症になると、立つ・座る・歩くといった動作もスムーズにできなくなってしまい、生活に大きな支障をきたしてしまいます。

そのため、変形性膝関節症の人は膝を曲げるストレッチを行い、膝関節の可動域を広げることが大切です。

膝の筋肉を伸ばすストレッチ

        1. あおむけに寝転がり、片脚の太ももの裏を両手で抱えます。
        2. 反動をつけないようにしながら、痛みが出ない程度に抱えた脚を軽く胸の方に引き寄せます。
          このとき手で引き上げるのではなく、脚の力で引き上げるイメージで、手は添えるだけにしましょう。
        3. 1~2の動きを10回ほど繰り返します。次に、反対の脚についても同様に行います。
        4. 1~3を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

可動域拡大訓練①

 

可動域拡大訓練①

膝の曲げ伸ばしストレッチ

        1. 膝を伸ばして床に座り、片方のかかとの下にタオルなどを敷きます。
        2. タオルを敷いた方のかかとをゆっくりすべらせながら手前に引き寄せ、膝をできる限り曲げます。
        3. かかとをゆっくりすべらせながら、膝をできる限り伸ばします。
        4. 1~3の動きを10回ほど繰り返します。次に、反対の脚についても同様に行います。
        5. 1~4を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

可動域拡大訓練②

 

可動域拡大訓練②

 

可動域拡大訓練②

膝蓋骨モビライゼーション

次にご紹介するのは膝蓋骨(しつがいこつ)モビライゼーションという、膝蓋骨の動きを良くすることで膝の曲げ伸ばしをスムーズにする方法です。やり方は以下の通りです。

 

        1. 膝を伸ばして床に座り、リラックスします。
        2. 自分の指で膝のお皿(膝蓋骨)を掴んで、上下、左右、斜めなど様々な方向に動かします。
        3. 1~2を1セットとし、1日に3セットを目安に行うようにしましょう。

可動域拡大訓練③

筋力強化訓練

先述にもあるように、変形性膝関節症の症状改善のためには、膝を支える筋肉をつけることが大切です。中でも太ももの前側に位置し膝のすぐ上にある大腿四頭筋(だいたいしとうきん)は、膝を支える重要な筋肉で、ここを鍛えることは変形性膝関節症の治療に効果的であるとされています。

そこでここからは、大腿四頭筋の筋力を向上するための運動方法を3つご紹介します。

大腿四頭筋を鍛える運動①

        1. あおむけに寝転がり、左膝を直角以上に曲げます。
        2. 右脚を伸ばしたまま、床から10cmほど上に持ち上げ、その状態で5秒間キープします。
        3. 右足をゆっくり元に戻し、2~3秒間休みます。
        4. 2~3の動きを10回ほど繰り返します。次に左脚についても同様に行います。
        5. 1~4を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

筋力強化訓練①

 

大腿四頭筋を鍛える運動

次は、上記でご紹介したトレーニングを椅子に座った状態で行う方法です。実際にやってみて、自分に合った方法で継続してみましょう。

 

        1. 椅子に浅く腰かけます。少し前かがみの姿勢になり、膝をまっすぐ伸ばした状態で右脚を前に出します。かかとは床につけます。
        2. 右膝を伸ばしたまま、右足を床から10cm上にゆっくり上げ、その状態で5秒間キープします。
        3. 右足をゆっくり元に戻し、1~2秒間休みます。
        4. 2~3の動きを10回ほど繰り返します。次に左足についても同様に行います。
        5. 1~4を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

筋力強化訓練②

大腿四頭筋を鍛える運動

次に、クッションを使い、床の上で簡単にできる運動をご紹介します。

 

        1. 床に脚を伸ばして座り、両手は体の後ろにつきます。
        2. 右膝の下にクッションなどを敷き、左脚は膝を軽く曲げて立てます。
        3. 右脚の太ももに力を入れ、クッションを押しつぶすようにして、その状態を5秒間キープします。
        4. 3の動きを10回ほど繰り返します。次に、左脚についても同様に行います。
        5. 1~4を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

筋力強化訓練③

有酸素運動

変形性膝関節症の治療のための運動には、有酸素運動も推奨されています。中でもウォーキングは、誰でも手軽にできる運動で、広くおすすめされています。

しかし、ウォーキングはやりすぎると、軟骨のすり減りが余計に進み、症状が悪化してしまうリスクもあります。膝に痛みがある場合は無理して歩くことはせず、行う場合は30分(約3000歩)を週2、3回を目安にするようにしましょう。

変形性膝関節症の人におすすめの有酸素運動としては、水中ウォーキングもあげられます。水中では、水の浮力により膝への負担がかかりにくいため、無理せずに続けることができます。

有酸素運動をする人

その他、余裕のある方向けの運動

ここまででご紹介した運動を行ってみて、まだ追加で運動する余裕がある方は、下記に紹介する運動もやってみましょう。

中殿筋を鍛える運動

ここでは、中殿筋(ちゅうでんきん)を鍛える運動をご紹介します。

中殿筋は、骨盤の横にある筋肉で、骨盤と大腿骨を固定している重要な筋肉です。歩く際に骨盤を支え、安定させる役割を果たしています。ここを鍛えることで、歩く際に骨盤が安定し、歩行などの際に膝への負担を軽減することができます。

 

        1. 身体と脚がまっすぐになるように、横向きに寝転がります。このとき下側の脚は軽く曲げ、バランスを取るようにしましょう。
        2. 伸ばした脚をゆっくりと上に持ち上げ、5秒間キープし、ゆっくり下ろします。
        3. 2の動きを10回ほど繰り返します。次に、反対の脚についても同様に行います。
        4. 1~3を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

中殿筋を鍛える運動

この運動では、脚を高く上げすぎると、中殿筋ではなく腰に負荷がかかってしまいます。お尻の横がつらいと感じる高さで止めるようにし、中殿筋にしっかり負荷がかかるように気を付けましょう。

また、上半身が後ろに傾いた場合、中殿筋ではなく太ももの前側に負荷がかかります。身体は床に対して垂直に横を向くようにしましょう。

体幹を鍛えるトレーニング(ドローイン)

膝への負担を軽減するには、体幹を鍛えることも重要です。体幹を鍛え、安定させることで、膝への負担を軽減することができます。

ここでは、体幹トレーニングの中でも「ドローイン」という方法をご紹介します。

 

        1. あおむけに寝転がり、両膝は立てます。
        2. 3秒間かけて、お腹を膨らませながら、鼻から息をゆっくり吸います。
        3. 次に7秒間かけて、お腹をへこませながら、口から息をゆっくり吐きます。
        4. 息を吐ききったら、お腹はへこませたまま10~30秒間キープします。
        5. 鼻から息をゆっくり吸いながら、お腹を元の状態に戻します。
        6. 1~5を1セットとし、1日に3セットを目安に行いましょう。

体幹を鍛えるトレーニング・ドローイン

 

体幹を鍛えるトレーニング・ドローイン

足首・足裏を柔らかくするストレッチ

足首や足裏を柔らかくするストレッチを行うことで、足の接地時の衝撃を膝だけでなく、足でも吸収できるようになり、膝への負担を軽減することが期待できます

 

        1. 膝を伸ばして床に座ります。
        2. 膝に力を入れ、つま先を伸ばして、呼吸をしながら5秒間その状態をキープします。
        3. 膝に力を入れ、つま先をそらせて、呼吸をしながら5秒間その状態をキープします。
        4. 2~3の動作を20回ほど繰り返します。

足首・足裏を柔らかくするストレッチ

タオルギャザー運動

足の裏が不安定だと、歩く際の膝への負担が大きくなってしまいます。タオルギャザー運動では、足の裏の筋力を強化することで、立った際や歩行時のバランスを改善し、膝にかかる負担の軽減が見込めます。

 

        1. 椅子に座り、足の下にタオルを敷きます。
        2. 足の指を使ってタオルをたぐり寄せます。
        3. 1~2の動作を5回ほど繰り返し、反対の足も同様に行います。

タオルギャザー運動

その他、補助的な治療

リハビリテーションとは、日常的な動作の回復を目的とした治療の総称であり、運動という自らが取り組む治療のほか、患部を動かしやすくするために補助的に外部から関節を刺激する治療を行います。ここではそれらの補助的な治療をご紹介いたします。

物理療法

物理療法とは、名前のとおり「物理エネルギー」を活用した治療のことです。具体的には「熱エネルギー」を活用し患部をあたためる温熱療法や、「電気エネルギー」を活用し患部に通電を行う電気刺激療法などが挙げられます。どちらも血流を改善し、関節の柔軟な動作獲得に補助的に貢献するだけでなく、変形性膝関節症による疼痛の軽減も見込めます。

超音波治療も物理療法に含まれます。微細な振動を皮膚の下にある患部へ送り、血流を改善して組織の柔軟性や伸展性を高めたり、細胞の活性化などが期待できるので、変形性膝関節症のリハビリテーションの選択肢のひとつになります。

変形性膝関節症に対しては、これらの物理療法をストレッチやトレーニングといった運動療法と並行して行うことで症状の改善に相乗的な効果が見込めます。

バイオセラピー

リハビリテーションとの組み合わせに期待できる治療として「バイオセラピー」が挙げられます。バイオセラピーとは患者さん自身の組織を活用する再生医療やその関連技術のことで、具体的には患者さん自身の血液や脂肪組織を活用します。メジャーリーガーの大谷翔平選手が肘の治療に活用した再生医療「PRP療法」やその関連技術である「PFC-FD™療法」、また、脂肪から採取する幹細胞を活用する「脂肪由来幹細胞治療」が該当します。

血液を活用する「PRP療法」「PFC-FD™療法」では、患者さん本人から採血を行い、その血液を遠心分離することで得られる血小板濃度の高い液体を患部に注入します。血小板には組織修復や抗炎症作用のある“成長因子”が含まれています。

脂肪組織を活用する「脂肪由来幹細胞治療」では、患者さんの皮下脂肪を微量採取、その中に含まれる“幹細胞”を培養して患部に注入します。“幹細胞”は、他の細胞へ変化する分化能、自身のクローンを作り出す複製能が備わっています。

 

これらのバイオセラピーは、変形性膝関節症に対する手術以外の治療のなかでは比較的長い効果を発揮すると言われており、これら治療を研究した報告(*4)では、注入から12ヶ月後も治療が効いていたとされる割合が、「PFC-FD™療法」においては60.8%(306膝中186膝)、「脂肪由来幹細胞治療」では58.9%(107膝中63膝)となっています。

持続性があるため、継続が求められるストレッチやトレーニングといったリハビリテーションとは相性が良いとされています。

まとめ

変形性膝関節症の方が運動療法を行う場合、過度な運動や無理をして行う運動は禁物です。無理をすれば、逆に変形性膝関節症を進行させ、痛みなどの症状が悪化してしまう可能性もあります。医師の指導のもと、ご自分にとって適切な回数を把握して取り組みましょう。

運動療法において大切なことは“継続すること”です。「絶対にこれくらいやらなければ」とハードルを上げてしまうと、長続きしないことも多いです。最初は週1からスタートするなど、ご自身のペースで大丈夫ですので、無理なく続けられる程度の運動を長く継続するようにやってみましょう。

 

 

参考文献

*1…Zhang W, et al (2008). OARSI recommendations for the management of hip and knee osteoarthritis, Part II : OARSI evidence-based, expert consensus guidelines. Osteoarthritis Cartilage, 16, 137-162.

*2…津村 弘(2017).「変形性膝関節症の管理に関するOARSI勧告OARSIによるエビデンスに基づくエキスパートコンセンサスガイドライン(日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドライン策定委員会による適合化終了版)」『日本内科学会雑誌』106(1), pp75-83.

*3…Treatment of Osteoarthritis of the Knee – 2nd Edition.
https://aaos.org/globalassets/quality-and-practice-resources/osteoarthritis-of-the-knee/osteoarthritis-of-the-knee-2nd-editiion-clinical-practice-guideline.pdf

*4…大鶴 任彦 et al. 変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築. -基礎と臨床 2020年9月号 特集:幹細胞・PRP・衝撃波−Biologic healingのエビデンス. 関節外科. 2020年9月. vol.39 No.9. 945-954

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