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変形性膝関節症 ひざ PFC-FD ASC

2022.7.26/最終更新日:2022.7.26

膝の再生医療や関連技術一覧(2022年)|医師監修

膝の再生医療の概要

実用性

膝の再生医療は徐々に実用化されつつあります。とはいえ、世間でイメージされているような「軟骨や骨の再生」といった効果は検証段階であり、主に疼痛や可動域の改善などの膝の諸症状に対しての効果が主となっています。

現在実用化されつつある再生医療やその関連技術が採用されている医療機関を以下のボタンから検索できますので、すでに新しい治療をご検討中の方は御覧ください。

 

本記事では実用化されつつある膝の再生医療を網羅的にご紹介いたします。

立ち位置

まず、再生医療が膝の治療においてどのような立ち位置かについて解説いたします。

膝の再生医療の対象となる主な疾患は「変形性膝関節症」です。変形性膝関節症の患者数は日本では約2530万人といわれており、60歳以上の有病率は男性で45%、女性では70%にものぼるとされています(*1)。 高齢者で膝が痛む、膝がO脚に変形気味、という方の多くはこの変形性膝関節症の可能性が高いです。

この変形性膝関節症に対し、これまでは主に“保存療法”と“手術”が行われてきました。“保存療法”の例としては膝にヒアルロン酸を注入するヒアルロン酸注射や、リハビリテーションが挙げられます。“手術”の例は脚の骨を切って関節角度を調節する骨切り術や人工関節置換術などがあります。

・骨切り術 ・人工関節置換術

 

流れとしては、一定期間“保存療法”を行って、効果が出なくなったり、症状が更に悪化・進行した場合に“手術”を検討することが一般的です。ですが、保存療法が効かなくなったからといって、すぐには手術に踏み切れない方も多いのが実情です。

  • 「ヒアルロン酸やリハビリは効かないけれど手術は怖い」
  • 「長年、整形外科に通っているけれど、良くならない」
  • 「手術はしたくないが、膝の痛みはなんとかしたい」

こういった方向けに、保存療法と手術の隙間を埋める治療として再生医療やその関連技術が選ばれています。

このように膝の再生医療は“保存療法”と“手術”の中間にあたる治療として活用され始めています。既存の保存療法よりも除痛や日常生活動作改善の効果が見込め、手術を回避・遅延することが期待されています。

膝の再生医療の一覧

ここからは現在、膝の再生医療として実用化されている治療を紹介していきます。膝の再生医療を検討中の方は参考にしてみてください。

幹細胞治療(第二種再生医療)

脂肪由来幹細胞治療(ASC治療)

概要

幹細胞は自己複製能や多分化能を有することから、診療科を問わず様々な分野で期待を寄せられています。滑膜や骨髄などからも採取することができますが、近年、局所麻酔下で日帰りで簡単に採取できる皮下脂肪から採取した幹細胞を培養し、それを変形性膝関節症患者の方の膝関節に注射する治療成績が多く報告されています。

培養幹細胞治療は2014年に施行された「再生医療等安全性確保法」の規定の中で行うことができます。注入した幹細胞が傷んだ組織に直接生まれ変わるイリュージョン的な治療ではなく、幹細胞から放出される液性因子のはたらきかけに、ホストである患者様の組織や細胞が応えることで、修復作用、抗炎症作用を期待する治療になります。

対象となる疾患

「変形性膝関節症」に対して用いられます。年齢による変化で軟骨がすり減り、関節内の炎症や痛みが生じる疾患です。

加齢や肥満、遺伝子が原因で発症する一次性変形性膝関節症と、外傷をきっかけに発症する二次性変形性膝関節症に分類され、患者様の多くは前者に当てはまります。超高齢化社会の日本においては、誰もが罹患しうる深刻な疾患です。

効果や治療実績

ひざ関節症クリニックグループで脂肪由来幹細胞(ASC)治療を行った患者様の経過観察時期を、治療から1か月後、3か月後、6か月後、12か月後に設定し、海外でも用いられている評価基準を用いて評価しました。

その結果、注射前と注射後12カ月後とを比較すると、統計学的有意差を持って、痛みや日常生活動作などのデータは改善していました。また約60%の患者様でレスポンダー(奏功した)という結果を得られました。

加えて、変形性膝関節症の初期、進行期、末期で治療経過を比較すると、病期が浅いほど(つまり初期に近いほど)治療効果が出やすいことが分かりました。(*2,3,4)

また治療方法の有効性を検証するためには、患者主体評価だけではなく客観的評価が大切です。MRIを用いて、軟骨体積にどのような変化が出るか調査した結果、病期の進行した症例の場合、後述するPFC-FD療法と併用する治療が、最も軟骨体積が増加する可能性が分かってきました。(*5)

 

治療の流れやより詳細な内容については「ひざ等への再生医療「脂肪由来幹細胞(ASC)治療」とは」もご参照ください。

費用

脂肪由来幹細胞(ASC)治療は自由診療になるため、費用は全額患者様負担となります。費用は各医療機関ごとに異なり、通常は100万円を超える治療です。正確な費用については各医療機関に直接ご確認ください。

 

下記ボタンより脂肪由来幹細胞(ASC)治療を提供している全国の医療機関を調べることができます。

 

PRP療法(第二種/第三種再生医療)

一般的なPRP療法

概要

PRP (Platelet-Rich Plasma)とは、患者さんから採取した血液を遠心分離して得られる、血小板を多く含む分画である多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)のことを指します。

このPRPを膝関節に注射することで、血小板内の成長因子やサイトカイン(周囲の細胞に影響を与えるとされるタンパク質の一種)の組織修復や抗炎症・除痛効果を期待した治療になります。

施術は採血と遠心分離を行った液体(血漿)の投与のための注射が必要ですが、手術や入院などは必要ありません。通常数回の通院で完了することがほとんどです。

対象となる疾患

主に活用される疾患としては「変形性膝関節症(第二種再生医療になります)」が挙げられます。またスポーツ選手に用いられることも多く、元ヤンキースの田中将大選手や、エンゼルスの大谷翔平選手が、右肘の靱帯損傷でPRP療法を行なったことでも知られています。

効果や治療実績

PRP療法における主役、血小板には下記のような様々な成長因子が含まれています。

  • PDGF…血管新生・細胞増殖
  • VEGF…血管新生
  • TGF β…細胞外基質産生・細胞増殖
  • FGF…細胞増殖・血管新生
  • EGF…間葉系幹細胞や内皮細胞増殖・他の成長因子を刺激
  • HGF…血管新生・内皮細胞増殖
  • IGF 1…筋芽細胞増殖・骨格筋修復

(Taylor DW et al. Clin J Sport Med 2011; 21: 344-352)

 

血管の新生や細胞の増殖など、修復を促進する因子群が含有されています。とはいえ、PRPの主な効果は修復よりも痛みの低減などの抗炎症作用のほうが強いとされています。

変形性膝関節症750膝におけるPRP療法において、治療1年後に奏功したと判断されたのは全体の59.0%であったことが報告されています。(*6)

自家培養軟骨移植術(再生医療製品を用いた治療)

概要

自家培養軟骨移植術とは、自分の軟骨細胞を培養して欠損部分に移植する再生医療です。

対象となる疾患

外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎において、軟骨の損傷サイズが計4㎠以上のケースに適応となります。

外傷性軟骨欠損症とは、スポーツでの接触や、交通事故での衝撃など、外傷を原因として軟骨が欠損してしまう病態です。

離断性骨軟骨炎とは、成長期の小中学生などに見られる疾患で、スポーツなどの繰り返される関節軟骨への負荷や外傷をきっかけに血流障害を起こし、軟骨の下にある骨が一部壊死してしまうことで軟骨が遊離(剥がれる)してしまう病態です。

ただし、自家培養軟骨移植術は、変形性膝関節症に対しては治療が認められていません。

効果や治療実績

軟骨欠損症に対する自家培養軟骨移植術の治療成績の報告では、14人の患者に手術を行い、術後1年~6年の経過観察の結果、明らかな痛みを訴える患者はいなかったことが報告されています。(*7)

膝の再生医療関連技術

PFC-FD™療法

概要

PFC-FD™療法はPRPを応用した技術です。PRPと比較して、血小板内の成長因子が安定して抽出できる事、常温保存が可能なため、患者さんの都合に合わせて注射日を自由に選択できる事が長所です。なおPFC-FDは作製工程でフィルタリングする際、白血球などの細胞成分を除去するため、再生医療であるPRP療法をもとにした技術である一方、厚労省の定めた再生医療等安全確保法の規定からは除外されます。

PFC-FD療法はPRP療法同様に血液を遠心分離して作製した血小板を濃縮した液体(血漿)に、さらに血小板内の成長因子を活性化させる処置を施し凍結乾燥させます。投与するときは医療機関で生理食塩水で溶解して投与します。

対象となる疾患

主に変形性膝関節症に対して投与され、痛みの緩和や諸症状の改善に効果を発揮します。

変形性膝関節症以外にも、

・半月板損傷

・筋腱の損傷や炎症

・変形性股関節症

・テニス肘・ゴルフ肘

・肩・足首・手首の炎症

への活用も始まっています。

効果や治療実績

関節内で炎症を起こしている疾患に対し、PFC-FD™を関節内に注入(注射)することで炎症を抑制し、痛みや腫れの緩和が期待できます。

 

ここからはひざ関節症クリニックグループの最新の学術論文、学会発表よりPFC-FD™療法の有効性をご紹介いたします。

変形性膝関節症に罹患している306膝にPFC-FD™療法を実施して、治療1年後の患者主体評価は統計学的有意差を持って改善していたこと、膝の変形が軽度なほど、治療効果が出やすいことが報告されています(*4)。

またPFC-FD™療法の前後で、MRIを用いて軟骨体積を客観的に測定したところ、変形性膝関節症76膝において治療後平均8ヶ月で統計学的有意差を持って軟骨体積が増加していました(*5)。

さらにPFC-FD™療法を1回注射した42膝と月に一回の頻度で3回注射した38膝において、MRIを用いた治療前後の軟骨体積を比較したところ、3回注射のほうが体積が増加していたことも分かりました(*8)。

 

全国でPFC-FD™療法を採用している施設は850あり(2022年3月時点)、下記ボタンから検索できます。

 

飲み薬やリハビリ、ヒアルロン酸を始めとした保存療法を長期間実施し、それでも痛みがよくならず、医師から手術を勧められている、という方は一度PFC-FD™療法を検討されるとよいかもしれません。

費用

PFC-FD™療法は自由診療であり、治療を提供しているそれぞれのクリニックによって費用が異なります。相場は25〜35万円ほどです。

膝の再生医療まとめ

膝の軟骨がすり減ると再生は見込めず、それは現在の再生医療をもってしても、いまだ困難であると言わざるを得ません。

しかし、軟骨の摩耗に伴う痛みや可動域制限を改善させ日常生活動作への寄与を期待できる治療が現れつつあります。

ヒアルロン酸注入や電気・低周波治療といった従来の保存的治療で効果が出ず手術は受けたくない、という方はぜひ一度再生医療を検討してみてください。

 

 

※引用文献

*1…Yoshimura N, Muraki S, Oka H, et al. Prevalence of knee osteoarthritis, lumbar spondylosis, and osteoporosis in Japanese men and women: the research on osteoarthritis/osteoporosis against disability study. Journal of Bone and Mineral Metabolism 2009: 27,:620-628.

*2…Yokota N, Hattori M, Ohtsuru T, et al. Comparative Clinical Outcomes After Intra-articular Injection With Adipose-Derived Cultured Stem Cells or Noncultured Stromal Vascular Fraction for the Treatment of Knee Osteoarthritis. Am J Sports Med 2019 ;47 :2577-2583.

*3…Yokota, N, Yamakawa, M, Shirata, T, et al. Clinical results following intra-articular injection of adipose-derived stromal vascular fraction cells in patients with osteoarthritis of the knee. Regen Ther 2017:6 :108-112.

*4…大鶴任彦,横田直正,尾辻正樹,ほか.  変形性膝関節症に対するBiologic healing専門クリニックの実際とエビデンス構築.  関節外科 2020:39:945-954.

*5…大鶴任彦,前川祐志,尾辻正樹,ほか.変形性膝関節症に対するバイオセラピ-におけるSYNAPSE VINCENTを用いた関節軟骨評価.関節外科 2022:41:545-549.

*6…齋田良知, 若山貴則,内野小百合.PRP. 関節外科 2019:39:939-944.

*7…Takazawa K, Adachi N, Deie M et al:Evaluation of magnetic resonance imaging and clinical outcome after tissue-engineered cartilage implantation.-Prospective 6-year follow-up study-.J Orthop Sci 201214:413-424

*8…大鶴任彦,横田直正,前川祐志,ほか.変形性膝関節症に対するPFC-FD治療におけるMRI三次元自動解析ソフトウェアを用いた関節軟骨評価-単回注射vs.3回注射-.日整会誌2022:96:S147.

 

※参考資料

…関西医科大学雑誌 59巻 (2007) 2-4 号「ヒト脂肪組織由来幹細胞の分離と脂肪・骨・軟骨への分化  ー幹細胞の供給源としての脂肪組織ー」覚道 奈津子 et al.

…臨床スポーツ医学 Vol.37 No.7 「変形性膝関節症に対する再生医療を利用した保存療法の実際 – PRP・間葉系幹細胞・セルフリー療法 -」桑沢綾乃,仁平高太郎

…齋田 良知 講演「変形性膝関節症に対する新しい治療“PRP療法”について」Functional Food Research 2020 年 16 巻

…Regenerative Therapy11 (2019)5-7 「Can intra-articular injection of freeze-dried platelet-derived factor concentrate regenerate articular cartilage in the knee joint?」 Tomohiko Shirata,Yuki Kato

…戸田 佳孝. 変形性膝関節症に対する多血小板血漿注射の効果と内側半月板逸脱との関連性. 日本関節病学会誌. 2020年. 39巻1号. 15-20

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